日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『流浪のグルメ 東北めし』
『流浪のグルメ 東北めし』 第2巻
土山しげる 双葉社 ¥1,200+税
(2017年7月7日発売)
大衆グルメマンガの帝王・土山しげるのヒット作『喰いしん坊!』で、圧倒的な存在感を放っていたカリスマフードファイター、ハンター錠二。大食い界から身を引いた彼は生業のトラックドライバーに戻り、再び全国のうまいものを食べ歩いていた。
そのハンター錠二が東北を巡り、各地のソウルフードを紹介していく『流浪のグルメ』の第2弾。
今巻のカギを握る“東北めし”は盛岡の「じゃじゃ麺」だ。盛岡に転勤してきたばかりの若いサラリーマン・原沢は、歓迎会の〆で同僚たちからすすめられた「じゃじゃ麺」に面食らう。
「わんこそば」「冷麺」と並び盛岡の3大麺と称される「じゃじゃ麺」は、ジャージャー麺とは似て非なる代物。うどんのような特製麺に肉味噌、キュウリ、ネギが乗っており、好みにあわせて酢やラー油、コショウなどで味を整えて食べるのが一般的だ。
しかし、静岡出身の原沢にはピンとこない。不味そうな顔で「じゃじゃ麺」をすする原沢をたまたま見かけたハンター錠二は、「盛岡の裏のソウルフードを教えてやる」と声をかけ、惣菜パンからハンバーグ、五目肉まん、ローストチキン、からあげ定食と次々にメールで指令を出し、原沢に「うま~いっ♪」と舌鼓を打たせていく。
やがて舞台は花巻、遠野と移り変わり、原沢は自分がそれまで抱いていた岩手グルメのイメージを、いい意味で崩壊させていく。なるほど、遠野の名物がジンギスカンとは知らなかった。
放牧が盛んで牛・馬・羊と良質な肉が提供されるのだそうだ。
ちなみにジンギスカンを豪快に焼いて食べるシーンでは、ハンター錠二がトレードマークのサングラスを外す場面も。ただし絶妙なカメラアングルで素顔は決して見えない。
その意地悪な演出に、ニヤニヤが止まらなかった。
ハンター錠二の思惑は、最終的に原沢に「じゃじゃ麺」を食べさせ、「うまい!」といわせること。
岩手県内を駆け巡るグルメツアーは、その布石にすぎないのだ。固定概念を覆す岩手(裏)ソウルフードの数々に、原沢のみならず読者も魅了されていくこと請けあいだ。
<文・奈良崎コロスケ>
中野ブロードウェイの真横に在住。マンガ、映画、バクチの3本立てで糊口をしのぐライター。