365日、毎日が何かの「記念日」。そんな「きょう」に関係するマンガを紹介するのが「きょうのマンガ」です。
8月18日はビーフンの日。本日読むべきマンガは……。
『中華一番!』 第4巻
小川悦司 講談社 ¥388+税
8月18日。
漢字で書けば「八」と「十八」の日付である。
合わせて「米」の字になることから、本日はお米からつくられるビーフンの記念日に制定されている。
制定主体はビーフンの製造または輸入販売をおこなう企業が集まった「ビーフン協会」で、もちろんビーフン業界の超メジャー選手たるケンミン食品も加わっている。
この協会が定義するビーフンは、主原料として50%以上のお米からつくられた麺類のこと。
独特のもちもちした歯ごたえや風味、さらに栄養価の高さ、お米由来ならではの腹持ちのよさなどいろいろな魅力があるほか、小麦アレルギーの人々がパスタやうどんの代用麺としてごく身近に入手しやすい点でも価値がある。
そうしたビーフンの存在感をより強めよう、という主旨の記念日なわけだ。
さて、ビーフンつながりでピックアップできるマンガといえば、やはり『中華一番!』だろう。
舞台は19世紀、清朝末期の中国。
天才料理人の少年・マオは料理界最高の階級「特級厨師」の資格審査に挑み、見事にテストを突破。
料理は人を幸せにするという志を亡母から受け継いだマオは、陰謀や暴力行為で飲食業の利権を牛耳って人民を支配しようとする暗黒社会の料理ヤクザ「裏料理界」へ敢然と立ち向かっていく……というアツい料理バトルマンガだ。
1995年から「週刊少年マガジン」連載開始、途中で『真・中華一番!』と改題して「マガジンSPECIAL」への移籍を挟んで1999年まで続いたほか、合間の1997年にはアニメ化もされており、そちらで親しんだという人も多いだろう。
そんな『中華一番!』にビーフンが出てくるのは、第4巻収録の第28~29話のこと。
「特級厨師」になるための資格審査で、審査員ではなく受験者どうしで料理を食べさせあってお互いの皿を公正に評価するという、プロとしての誠実さを問われる試練がおこなわれていた。
そのなかで、チェリンという怪しげな女性が提出したのがイカスミをあえたビーフン。
コクのあるスミが麺にからむ様子はいかにもおいしそうで、実際、食べた人々は「何と濃厚で魔術的な引力‥‥!」「と‥‥止まらぬ‥‥!! お‥‥おそろしくアトを引く味だ‥‥!!」と夢中でむさぼっていく。
しかし、いくらなんでも夢中すぎるような……白目むきながら食べてるし……背景がぐんにゃり歪んで変なエフェクトついてるし……と思ったら。
それもそのはず、じつはこのイカスミビーフン、ケシの実から成分を抽出した麻薬の乳液を混ぜてあったのだ! 夢中どころかヤク中になるわ!
いやー、ヤバいヤバい。
けっきょく、マオやライバルのフェイが気づいて告発したため、チェリンは失格。
ついでに試験前にマオのツボへ針を刺して味覚障害を起こさせた裏工作まで発覚し、あえなくお縄につくのだった。
いやもう、料理どうこう以前の犯罪行為だからね!
というわけで、『中華一番!』は『包丁人味平』『鉄鍋のジャン!』に並び、“麻薬料理”が登場するマンガ御三家の一角ともいえるわけだが、それはそれとしてイカスミビーフン自体はふつーにおいしそうなメニューではある。
「ビーフンの日」にかけて、これを作って食べてみるのもいいだろう……。もちろん麻薬抜きでね!
以下余談。
このケシの麻薬入りビーフンはアニメ版の第13話でもド直球そのまんまやってましたね、フジテレビ日曜日夜のゴールデンタイムに……。
今だと改変されるだろうなー。
<文・宮本直毅>
ライター。アニメやマンガ、成人向けゲームについて寄稿する機会が多いです。著書にアダルトゲーム35年の歴史をまとめた『エロゲー文化研究概論 増補改訂版』(総合科学出版)。『プリキュア』はSS、フレッシュ、ドキドキを愛好。
Twitter:@miyamo_7