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『不能犯』第2巻 宮月新(作) 神崎裕也(画) 【日刊マンガガイド】

2014/10/02


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『不能犯』第2巻
宮月新(作) 神崎裕也(画) 集英社 \562+税
(2014年9月19日発売)


タイトルとなっている「不能犯」とは、実際の刑法学にも登場する用語。
その意味は「犯罪的な帰結を意図しても、その手段によって結果を発生させることがないため、刑罰の対象にならない行為」のことで、わかりやすい例としては“丑の刻参り”による呪殺などが挙げられる。たとえ本当に丑の刻参りによる呪いで人が死んだとしても、その行為による結果が証明できないこの世界では、犯罪そのものが成立せず、法で裁くことは不可能なのだ。

といっても、この『不能犯』の主人公・宇相吹 正(うそぶき ただし)は、呪いで人を殺すわけではない。彼が使うのは「思い込み」や「暗示」。
ターゲットにされた者は、ただのアイスティーに毒薬を入れられたと思い込んで死ぬ、車に何か細工をされたと思い込んで事故に遭う……まさしくそんな「不能犯」の案件を引き起こす。そして決して法で裁かれることがないゆえに、宇相吹は堂々と、冗談めかすように自らを「殺し屋」と名乗る。

基本的に一話完結形式の物語は、殺しのターゲットはもちろん、依頼人にも最大級の不幸が訪れる、なんの救いもない展開が特徴。そしてラストは宇相吹の「愚かだね 人間は」のセリフで締めくくられる。
そんな様式美も含めて、あえて言ってしまえば、「めっちゃイケメンの喪黒福造が出てくる『笑ゥせぇるすまん』」のようなテイストである。

最新2巻では、宇相吹なんかに関わらないで前向きに生きていればよかったのに……という気の毒すぎる依頼人も登場するなど、シニカルな味わいに磨きがかかっている。
宇相吹のちょっとした一言ににじむ「これはひどい」と言いたくなる人間性もますます絶好調だ。

というわけで、人間の心にある弱さや醜さを暴き出し、誰ひとりハッピーになれない、そんな物語に“蜜の味”を感じるタイプの人には最大級にオススメです。



<文・大黒秀一>
主に「東映ヒーローMAX」などで特撮・エンタメ周辺記事を執筆中。過剰で過激な作風を好み、「大人の鑑賞に耐えうる」という言葉と観点を何よりも憎む。

単行本情報

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