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『真マジンガーZERO VS 暗黒大将軍』第5巻 永井豪(作) 田畑由秋(脚) 余湖裕輝(画) 【日刊マンガガイド】

2014/10/03


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『真マジンガーZERO VS 暗黒大将軍』第5巻
永井豪(作) 田畑由秋(脚) 余湖裕輝(画) 秋田書店 \552+税
(2014年9月19日発売)


本作は、永井豪『マジンガーZ』をベースにしたマンガ『真マジンガーZERO』(全9巻、アニメ『真マジンガー 衝撃!Z編』の製作に合わせ「サポート連載」として執筆された)の続編である。

『真マジンガーZERO』の筋立ては、いたってシンプル。強大な敵が襲ってきて、地球が大ピンチ。おまけにマジンガーZが暴走して、人類を滅ぼすバッドエンドまで待ったなし。
この結末をなんとかしようとがんばるのが、アンドロイドのミネルバX(原典の『マジンガーZ』に登場した個体と異なり、等身大のナイスバディなロボット娘)。
自分の情報を過去に送って時空をさかのぼれるミネルバは、みんなが助かるハッピーエンドを目指して、何度失敗しても挑戦を繰り返す……。

つまり、マジンガー世界においてループを繰り返しているのだが、時間移動に事実上のパラレルワールドがからむ点におもしろみがある。
「前回はこういうメカでこういう戦法だったのに今度は違うなー」とか「前は人類50億人も死んでたのに今度は30億しか死んでないのかー」(おいおい)など、リセット時点でも状況が異なることで、読者とミネルバは新鮮な再スタートに放り込まれる。

暴走を抑えたマジンガーZが、最大最強の敵・ゴードンヘルを撃破して平和がおとずれた……かのように見えた世界に、突如として新たな敵、暗黒大将軍が出現するところから本作は始まる。
死闘の末、マジンガーZは大破寸前。そこに現れた新たなスーパーロボットのグレートマジンガーは、暗黒大将軍と互角の戦いを繰り広げるものの、なんとグレートマジンガーに反応したマジンガーZが暴走を始め……。

最新巻では、マジンガーZが暴走を起こさなかった世界を目指すため、前シリーズと同様にミネルバが時空をさかのぼるのだが、読者とミネルバが放り込まれる再スタート世界の衝撃は、さらに激しいものになる。
ミネルバは、グレートマジンガーの操縦者・剣鉄也とまた出会うものの、どうも様子が違う。性格が大人げないノリになっていたり、生身の人間なのに致命傷を負ってもすぐ全快して戻ってくる。何かおかしい。
やがて読者に示されるのは、人類を守る研究所の幹部達が、鉄也へ人間の尊厳に関わる“改良再生産”を行う光景。本巻の剣鉄也は、平行世界ごとに異なる軸に加えて、ひとつの世界のなかでも複数のありかたを強いられる宿業の戦士として描かれる。

そもそも原作者である永井豪の有名作自体、同じタイトルでもマンガ・TVアニメで設定やキャラが異なり、さらに続編やリメイク、他作家が起用される派生作でも、またゆらぎが生じている。それこそ無数の平行世界があるように。
本作は、『マジンガーZ』シリーズの企画レベルのゆらぎを、ひとつの物語として集約させているという解釈もできる意欲作なのである。



<文・宮本直毅>
ライター。アニメや漫画、あと成人向けゲームについて寄稿する機会が多いです。著書にアダルトゲーム30年の歴史をまとめた『エロゲー文化研究概論』(総合科学出版)。『プリキュア』はSS、フレッシュ、ドキドキを愛好。
Twitter:@miyamo_7

単行本情報

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