日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい！WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー！

今回紹介するのは、『エスパー魔美』

『エスパー魔美』 第7巻
藤子・F・不二雄 小学館 ￥429+税
（2017年7月28日発売）

同世代と比較してやや無邪気すぎる女子中学生超能力者の魔美と、おそらく藤子・F氏、全キャラクターのなかで最強にして最高の頭脳と人格を持つであろう高畑くんのコンビが、ご近所トラブルから国際レベルの犯罪までを水面下で解決、というのが基本フォーマットの本作。

『ドラえもん』を筆頭とする藤子・F氏お得意の日常SFコメディの1作ながら、読者の対象年齢がそれらよりやや高めに設定されているため、各エピソードのゲストキャラクターたちが抱える葛藤や、悪役キャラクターの悪意が妙にリアルなのも本作の魅力だ。
そのため1話完結のエピソード集ながら、ゲストキャラクターの内面的解決が数話にまたがるケースもある。

などと書くと、重そう、めんどくさそうと思われる方もいるかもしれないが、一読すればおわかりのとおり、テイスト自体は徹底してオーソドックスなコマ運びで描かれる、いつもの気楽な藤子・F作品そのもの。これぞベテランの腕。

しかも新装版コミックス全9巻中の第7巻目ともなれば、著者自身も完全に慣れた状態で、名人芸ここに極まれりといいたくなるようなエピソードばかり。

魔美のおせっかいな親切心が偏屈老人の気持ちをほぐす人情喜劇「スズメのお宿」、魔美がまったく気づかないうちに事件が解決してしまうギャグ回「スター志願」、山中での老人との出会いが予想を超えるスケールに発展する「生きがい」、『劇場版 エスパー魔美　星空のダンシングドール』の原作となった感動編「人形が泣いた？」ほか、安定のハイクオリティを楽しもう。

＜文・田中元＞
最近はWEB中心のライター。一昨年あたりに『アメトーーク！』で「しずかちゃん大好き芸人」をやっていたが、藤子Fヒロインなら魔美とパー子こそがツートップだと思います。
@gen_t