365日、毎日が何かの「記念日」。そんな「きょう」に関係するマンガを紹介するのが「きょうのマンガ」です。
9月2日は『必殺仕掛人』の放送が開始された日。本日読むべきマンガは……。
『仕掛人 藤枝梅安』 第1巻
さいとう・たかを(画) 池波正太郎(作) 北鏡太(脚) リイド社 ¥524+税
1972年の本日は、テレビ時代劇『必殺仕掛人』の放送が開始されたメモリアルデー。
「主人公が金銭をもらって人殺しをする」という内容が当時のテレビ時代劇としては異色であり、それゆえに様々な危惧も孕んでいた訳だが、結果としては大ヒット。
その魅力をここで語るのは話が長くなるにも程がありそうなので割愛させていただくが、のちに「必殺シリーズ」として続いてゆくなかで次々と魅力的なキャラクターや斬新な"殺し技"が考案され、それがさらにほかの創作物に多大なる影響を与えたという点でも、日本のエンタメ作品史上で非常に重要な作品である。
シリーズ第1弾の本作は、池波正太郎の連作小説『仕掛人・藤枝梅安』に、そのベースとなった短編『殺しの掟』をミックスしたものが原作となっている。
しかし『仕掛人・藤枝梅安』は放送と平行して書かれていたため、今でいうところのメディアミックス的な様相を呈しており、ドラマオリジナルの要素は非常に強い。
そもそもキャラクターの配置がまったく異なっており、ドラマでは表向きは針医者の仕置人・藤枝梅安と、凄腕の浪人・西村左内が対等の立場で描かれているが、小説のほうは西村左内が登場せず、かわりに梅安にTV版に未登場の彦次郎という心強い相棒がいるのが最大の違いだろう。
……と、ここでピンときた人もいるかもしれないが、『仕掛人・藤枝梅安』はいわゆる「バディもの」といっても差し支えない内容なのである。彦次郎は梅安にとって、仕掛人としての仲間という以上に親友でもあり、しばしば旅をしながら寝食をともにすることもあれば、互いを思いやるエピソードにも事欠かない。
TVシリーズのほうは全体的にドライな関係が特徴だが、梅安と彦次郎の描かれ方は、ドライどころか「絆」と呼ばれるべきレベルのもの。世界観そのものには無情な空気が充満しているが、それがかえって2人の絆がどれほどかけがえのないものかを強調することにもなっており、ぶっちゃけ、特定層の人にとっては「萌え狂いそう」な要素が山盛りなのだ。これ、ホントのことですからね!
そして、そのバディものとしての物語は、小説に忠実なさいとう・たかを版『仕掛人 藤枝梅安』(マンガ版は「・」がない)でもたっぷり堪能できる。
特に単行本第2巻に収録されている「後は知らない」のエピソードなどは、仕掛けのターゲットである武士と若き剣士の関係性が萌ポイント5億点オーバー。もちろん、超絶に魅力的な漢のドラマとして男子が必読なのはいうまでもないが、この見方によってはキュンキュンきまくる物語が、もっと女子にも届くといいなぁと思う次第であります。
<文・大黒秀一>
主に「東映ヒーローMAX」などで特撮・エンタメ周辺記事を執筆中。過剰で過激な作風を好み、「大人の鑑賞に耐えうる」という言葉と観点を何よりも憎む。