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『甘木唯子のツノと愛』 久野遥子 【日刊マンガガイド】

2017/09/03


日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!

今回紹介するのは、『甘木唯子のツノと愛』


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『甘木唯子のツノと愛』
久野遥子 KADOKAWA ¥720+税
(2017年7月24日発売)

ミュージックビデオ映像のほか、劇場アニメ『花とアリス殺人事件』におけるロトスコープアニメーションのディレクティングや『クレヨンしんちゃん 襲来!!宇宙人シリリ』のキャラクターデザイン、またテレビではNHK「おかあさんといっしょ」番組内人形劇「ガラピコぷ~」OP制作などで注目を集めるアニメーション作家・久野遥子。

アニメ分野の活躍のみならず、大学在学中の2010年にエンターブレインのマンガ賞「えんため大賞」を獲り、最近は「コミックビーム」誌で作品をちょくちょく発表しており、漫画家としても存在感を放っている。

そんな久野氏の初単行本となるマンガ作品集が、この夏に発売された『甘木唯子のツノと愛』だ。

とある小学校を舞台に、まわりの空気に合わせることなく自分の目に見える世界を信じて摩擦を起こす少女と、その少女の頑なさを理解できない親友との関係性を綴る「透明人間」。

小学校男性教師に片思いする女子高生が、“大人になりたい”と“子どもではいられない”の矛盾にゆさぶられる心のドラマを、女の子が巨大化して怪獣と戦うアルバイトをしているという物理的なサイズ設定を挟んで示す「IDOL」。

サーカス団の少年が大きな蛇の着ぐるみを着せられ少女を呑みこむパフォーマンスを任されるうち、相手役の少女に執着しだすがその女の子もじつは着ぐるみで……と、外面によって生まれる内面のアヤを切りだす「へび苺」。

額にツノの生えた妹と、ツノはないがもの言いにトゲがある兄が、自分たちを置いて家を離れた母親に対する複雑な感情のうねりに焦がれる「甘木唯子のツノと愛」……。

収録作は以上の4作品。
いずれも何かしらの象徴的・寓話的なビジュアル要素を経由することにより、鮮烈で生々しい人間感情を読者へすっと自然に注ぎこむ手際が見事で、マンガとアニメーションの両分野をまたぐ著者ならではの腕前が光っている。



<文・宮本直毅>
ライター。アニメやマンガ、成人向けゲームについて寄稿する機会が多いです。著書にアダルトゲーム35年の歴史をまとめた『エロゲー文化研究概論 増補改訂版』(総合科学出版)。プリキュアはSS、フレッシュ、ドキドキを愛好。
Twitter:@miyamo_7

単行本情報

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