日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『かみつき学園』
『かみつき学園』 第1巻
キダニエル 講談社 ¥600+税
(2017年8月9日発売)
世界の大半を、「エピキュリアン」と呼ばれる種族が覆う世界。
食事は「ニンゲン」の血。
エピキュリアンたちは脆弱なニンゲンを守り、大切に育み、味わっている。
見た目が幼い高校1年生の梅田雫は、学園で初めて1頭のニンゲンをパートナーとして手に入れることになる。
パートナーの「家畜一号」は、だれもがハッと驚くほどの美人だった。
女の子だけの、耽美な空気漂う従属コメディ。
独特な世界観がおもしろい。
エピキュリアンはニンゲンを調教し上下関係を教え、憐れ慈しむように育てる。
ニンゲン側はエピキュリアンの家畜として、おいしくいただいてもらえることに喜びを感じる。
食用の愛玩ペット、といったところ。美しく育ったほうがおいしいらしい。
学内でニンゲンのふとももに牙をたてる。ニンゲンは首筋を自ら差しだす。
ほとんど見た目が同じ少女たちの、はっきりした隷属関係は、とてつもなくエロティックだ。
ちんちくりんな雫は、ニンゲンの家畜一号とも、対等に親しくなりたい、と考えている子。
みんなに優しい彼女の存在で、作品全体の空気はライトになっている。
とはいえ、雫が本能のままに、まるで性行為のように家畜一号を押し倒して身体を求めるようになっていくさまは、艶めかしい。
一方、自分のかわいらしさに自信のあるニンゲン・ベルガモットは、パートナーではない雫を誘惑し、自分をつまみ食いするよう誘惑する。一般的な吸血鬼譚と真逆で、これがまた、淫ら。
「牧場育ち」「劣等品種」「ニンゲン愛護法」など、ほのめかされる単語の数々も、隷属関係の怪しい雰囲気を醸しだしている。
全体的にコミカルなので、享楽的世界観と青春友情物語の両方を、安心して楽しめる作品。
ただニンゲンの「食べていただきたい」という行動は、藤子・F・不二雄の『ミノタウロスの皿』に登場した美しい少女ミノアが、笑顔で料理になった様子を彷彿とさせるため、ちょっとゾクリとしてしまう。
<文・たまごまご>
ライター。女の子が殴りあったり愛しあったり殺しあったりくつろいだりするマンガを集め続けています。
「たまごまごごはん」