日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『将棋めし』
『将棋めし』 第2巻
松本渚 KADOKAWA ¥600+税
(2017年8月23日発売)
『将棋めし』は、『盤上の詰みと罰』でデビューした松本渚が続けて放った将棋マンガ。
“将棋と食”をテーマにし、第1巻時点で早くもTVドラマ化されている。
主人公は、タイトルも獲得して快進撃中の女性プロ棋士・峠なゆた六段(愛称なゆたろう)。
根っからの勝負師気質のなゆたにとって、対局中に選ぶ食事も戦いの一部。
「相手とメニューがかぶるのは嫌」。では、何を頼むべきか?
見え隠れする将棋界の微妙な人間関係とヒエラルキーの狭間で、盤上の外でも昼食、夕食をめぐって相手と激しい心理戦を(勝手に)繰り広げるなゆた。
「さすがに考えすぎだろ!」というのが本作の笑いどころでもあるが、実際の棋士のなかにもなゆたほどではないにせよ、対局中の食事にこだわりを持っている人が多いという。
ひふみんこと加藤一二三九段が一時期ひたすらうな重を食べ続けた、というのは有名な話。
米長邦雄永世棋聖と加藤一二三九段の対局中の「みかん大食い合戦」ももはや伝説だ。
ほかにも力うどんに餅トッピング(?)をした棋士や、冷やし中華に餅トッピングをした棋士もいるという。
現実世界でも将棋とめしのエピソードは事欠かない。
人物や棋戦名などは架空ながら、『将棋めし』には「ほそ島や」のかつ丼、「みろく庵」の鍋焼きうどんなど、将棋ファンにはおなじみの実在メニューが登場する。
今巻の第2巻では、トップ棋士を研究しようとあえて同じ「からあげ定食(からあげ3個追加)」を頼んだなゆた。
この一着は妙手か悪手か?
<文・卯月鮎>
書評家・ゲームコラムニスト。週刊誌や専門誌で書評、ゲーム紹介記事を手掛ける。現在は「S-Fマガジン」(早川書房)でファンタジー時評、「かつくら」でライトノベル時評を連載中。
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