日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『衛府の七忍』
『衛府の七忍』 第4巻
山口貴由 秋田書店 ¥562+税
(2017年8月18日発売)
巻が進むごとにこれでもかと勢いを増す『シグルイ』『エグゾスカル零』に続く山口・残酷時代劇の決定版!
“怨身忍者”たちの変化も技も、彼らの前に立ちはだかる敵にしても、これがホントの荒唐無稽。その造形も発想もだれも見たことのない領域に達していて、この漫画家はいったいどこまでいってしまうのかワクワクが止まらない。脇役も含めて、すべてが過剰なサービス精神と濃密な熱量の塊。髪の毛ひとすじまでにいきわたるエナジーを、読み手も心して受け取り、ページ狭しと暴れまわる筆致を確実に読み取るべし!
……とはいいつつも、決して肩ひじ張って読ませるわけではなく、いい意味でところどころに脱力感があるのが本作の魅力である。
タイトルが示すように7人の“怨身忍者”が次々に登場する構成だが、本巻ではついに5人目の霹鬼が出現。第3巻で登場した『シグルイ』の藤木源之助を思わせる“幻之介”が、さても意外なかたちで……!?
そして、物語は新章「宮本武蔵編」へ突入だ。
血と内臓が飛び交い、百戦錬磨の肉体が、異形たちが、生々しくぶつかりあう画面。そこに不思議な軽さを与える独特なセリフ回しには毎度ニヤリとさせられるのだが、本巻で頻繁に使われる「チェスト」は2017年マンガ界の流行語大賞になりそう!?
「チェストる」という動詞形もあり……その意味は作中で武蔵がビシッと語ってくれている。物騒で、しかしどこかおかしみがあって、無性に口にしてみたくなるのだ!
<文・粟生こずえ>
雑食系編集者&ライター。高円寺「円盤」にて読書推進トークイベント「四度の飯と本が好き」不定期開催中。
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