365日、毎日が何かの「記念日」。そんな「きょう」に関係するマンガを紹介するのが「きょうのマンガ」です。
9月27日は日本初の地下鉄・銀座線の起工式が行われた日。本日読むべきマンガは……。
『RAPID COMMUTER UNDERGROUND』
座二郎 小学館 ¥815+税
1925(大正14)年の9月27日は、日本初の地下鉄である銀座線の起工式が行われた日。
東洋でも初の試みであり、日本の近代化の象徴ともいえる事業であった。無事に開通したのは2年後の1927(昭和2)年の年末。区間は上野~浅草間の4駅(2.2km)である。
あれっ、銀座線なのに肝心の銀座を通っていない!?
このあとじわじわと路線を延ばし……現在の「浅草〜渋谷」間を走るようになったのが1939(昭和14)年、「銀座線」という名称が正式に決定したのはさらにその後の1953年(昭和28年)のことであった。
ここで紹介する『RAPID COMMUTER UNDERGROUND』は究極の地下鉄マンガといえよう。
なにしろ地下鉄を題材にしたこのフルカラーコミックを、著者は通勤時の東京メトロ東西線車内で描いたというのだから!
通勤は片道2時間、往復4時間。
ネーム、下描き、ペン入れ、ベタ、グレーのサインペンでの彩色はすべて車内で。
絵の具を使う塗りだけは、さすがに家で行ったそうだが……。
地下鉄は密室感があるから意外と集中して描けるのかも?
日々、車内で黙々とマンガを描き続ける著者を主人公とした本作は、“リアルな夢”のような物語。ふつうの地下鉄のようで現実とはかけ離れた空間に接続することもあり、珍客が乗ってきたり不思議な体験をしたり。
あらためて考えてみれば、地下を走る鉄道というものはなかなかファンタジックな存在だ。
クラフト紙をベースにぼんやりとにじむ絵の具で彩色された画面は、少し薄暗くて幻惑的。地上の喧噪とは断絶された地下鉄のなかで見るのは、きっとこんな夢なのだろう。
<文・粟生こずえ>
雑食系編集者&ライター。高円寺「円盤」にて読書推進トークイベント「四度の飯と本が好き」不定期開催中。
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