『銀のニーナ』第5巻
イトカツ 双葉社
(2014年9月27日発売)
アラサー男子に今必要なのは、恋人ではなく、少女を育てることだ。大人の自覚を持ち成長するには、娘が必要なのだ。
息子でもいいって? そこはほら、かわいい女の子が見たいですし。
アラサー男子の情けないところをむき出しにしつつ、少女を育てることで成長する様を描いたのがこの作品。
27歳、失業して実家に帰ってきた志摩崎修太郎。彼の家族のもとにやってきたのは、フィンランドに行った姉の10歳の娘、銀髪碧眼のニーナ。修太郎は、なりゆきでニーナのおもりをすることになる。
ニーナは極めて純粋。見るものすべてが新鮮に映るのか、いつも本気で笑顔だ。
夢破れ、無職でどん底まで落ち込んでいた修太郎は、ニーナに食べ物、遊び、周囲の自然、作物などを教える側になる。彼女が一つひとつに感動する様は、修太郎の焦る心を癒していく。
4巻から5巻にかけて、ニーナは学校に行き、修太郎は幼なじみの巴の農家の手伝いをする、という大きな変化が訪れる。
ニーナは持ち前の純粋さで、あっという間にクラスに友人ができる。一方、修太郎は東京の就職に失敗。仕方ないから畑を手伝うと言い出し、農業を愛する巴を激昂させてしまう。うーん情けない。
三十路前は、なんでもできると思っていた自分の実力を知り、挫折する時期。心も荒みやすいお年ごろ。正直、修太郎は頼りがいがなさすぎる。
それでもなお、ニーナが修太郎を慕うのは、彼が不器用ながらも正直に接しようと心がけているからだ。
男に父性がともなうと、一気に貫禄がつく。守るべき相手から、世界は受け取り方次第でいくらでも幸せになれると気づかされ、一緒に成長していくものなのだ。
なによりニーナがかわいい上に、巴との関係がニヤニヤすぎるので、アラサー女子好きも読んでください。
<文・たまごまご>
ライター。女の子が殴りあったり愛しあったり殺しあったりくつろいだりするマンガを集め続けています。
「たまごまごごはん」