日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『CITY』
『CITY』 第3巻
あらゐけいいち 講談社 ¥580+税
(2017年9月22日発売)
『日常』の著者が描く、スラップスティックコメディ。
元気いっぱい金はなし、心の髄までピュアな暴走娘の大学2年生・南雲。
ごく普通のまじめな、そしてツッコミ体質な写真好き大学1年生・にーくら。
2人のボケツッコミ生活を軸に、第2巻までは描かれていた。
第3巻では、超のんびり屋で天然、写真の賞にしばしば入選している泉わこが合流。3人体制で物語が動き始める。
わこは、第1巻の1話からちょっとだけ(土偶を持って)登場している。
そのあと何度か南雲・にーくらコンビとすれ違ってきた。傍観者の立ち位置だった。
彼女はひとりで、ゆったりと町を歩いては撮影したり、楽しいこと探しをしたりするのが好き。視野がものすごく自由で広い、芸術家肌なキャラだ。
南雲はお金がないという目の前のことしか基本見えていない。にーくらは南雲に振りまわされっぱなし。このミクロ視点な生活にわこが加わることで、一気に視野が広がった。
『日常』が学校や研究所をベースにした話だとしたら、『CITY』は町がテーマだ。
3人とも大学生なのだが、大学での様子はいっさい描かれない。
町内のまったく関係ない人々の生活が描かれる群像劇で、思いもしないところでつながっていくのがこの作品の魅力だ。
「ダダこねコンテスト」なるよくわからない大会に3人が参加した回がある。
それを開催したのは、第1巻では名前だけ、第2巻では噂でだけ登場する、前任の警官のお嬢様タナベ。
第3巻で彼女が飛ばしてしまったパラソルを、出前中の南雲が颯爽と拾った。外側の物語が、本筋と合流した瞬間だ。
3人が町を駆けまわるたびに、町の人間関係は次々と連鎖し、歯車が噛みあっていく。
<文・たまごまご>
ライター。女の子が殴りあったり愛しあったり殺しあったりくつろいだりするマンガを集め続けています。
「たまごまごごはん」