日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『まかいたいしコココちゃん』
『このマンガがすごい! comics まかいたいしコココちゃん』
林良時 宝島社 ¥900+税
(2017年12月9日発売)
第8回『このマンガがすごい!大賞』最優秀賞、受賞作品の単行本化。
魔王の娘であるコココは、いつか人間の世界に行って「友だち100人作る」ことを夢見る6歳の女の子。
そんなおり、1800年にもわたって交流の途絶えていた人間界に「魔界大使」の派遣が決定したことを知り、コココは猛烈な勢いでそれに自ら名乗り出る。止める魔王を鼻ホジしながら聞き流し、勝手に誓約書にサインをして人間界へと降り立ってしまう。
……とはいえ、いまひとつ「大使」が何をするものなのかわかっていないコココは、とりあえず「困っている人を助ける」ことで人間たちとの交流を図るのだが、ときに人間社会の"常識"という壁に阻まれて傷つくことも。
それでもめげない、一途なコココに心癒されること必至のハートフルコメディである。
本作は全5話で構成されているが、いわゆる人情話あり、動物たちと出会うふわっと不思議なエピソードもありという構成は、読み心地としては西岸良平の『鎌倉ものがたり』などに通じるところもあるかもしれない。
そして最終話では人間界と魔界との確執にまつわる大事件も描かれるが、このキュートな物語がこれで終わってしまうのは惜しいと、きっとだれもが思うことだろう。
最終話には「どこかでコココに助けられた人たち」が多数登場するのだが、そのそれぞれのエピソードも、願わくばいつか読んでみたい。
<文・大黒秀一>
主に「東映ヒーローMAX」などで特撮・エンタメ周辺記事を執筆中。過剰で過激な作風を好み、「大人の鑑賞に耐えうる」という言葉と観点を何よりも憎む。