日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『冒険エレキテ島』
『冒険エレキテ島』 第2巻
鶴田謙二 講談社 ¥940+税
(2017年11月21日発売)
第1巻が発売されたのが2011年。
じつに6年越しの、待望の続刊だ。
ヒロインは作中で、3年経って、やっとエレキテ島を見つけている。
ある意味シンクロしているのかも。
離島に住む飛行機乗り・みくらは、祖父といっしょに航空便を営んでいた。
祖父が死んでから、「エレキテ島アメリア様宛」という謎の荷物が届く。
そんな島どこにあるのか、と調べていたところ、みくらは祖父が死んだあとも続いている妙な日記を見つける。
エレキテ島の存在は嘘か真か。彼女は意地になってエレキテ島を絶対見つけると決意。
飛行機に乗り、目の下にクマをつくって地図を確認し、ときに墜落し、それでもあきらめない。
鶴田謙二は緻密な背景と、生き生きしつつもなまめかしく、かつ生活感がある女体描写に定評のある作家。
そこにSF要素がちょっぴりブレンドされ、レトロな飛行機が飛びまわる。
著者の魅力が全部詰まった作品だ。
みくらは非常にズボラで、女子力と呼ばれるものは皆無。住んでいるのは瓦礫みたいな小屋。
全裸やパンツ1枚でふらふらしながら、夢中になって地図を見る。
何があろうと負けない冒険者メンタルを持ちながら、時々急にしおらしくなる。
おじいちゃん子で、仲よしなのも島のじいさんばっかり。
イキイキした彼女は、読者の心をつかむ要素満載。
そんな彼女が飛行機でスイスイ飛びまわる。
まるで、うつし世からの解放を見ているかのようだ。
第1巻は「エレキテ島がどこにあるのか」を解明するための推理作品要素が強かった。
本巻はエレキテ島に上陸し、島を見てまわる様子が描かれる。飛行機は少なめ。
島は変な息苦しさに覆われており、不条理な夢のなかに迷いこんだかのようだ。
「仕事は終わった ここから先は冒険だ」
吹き出しもなく黙々とひとり、水着やジーパンタンクトップで島をうろつく彼女の姿は、レトロヨーロッパの町並みとあいまって、どのコマも絵になる。
たとえ島民に冷たく当たられても、気にしない彼女は見ていて元気になれる。
冒険は始まったばかり。
ぜひ続きは、早めに読みたいです。
<文・たまごまご>
ライター。女の子が殴りあったり愛しあったり殺しあったりくつろいだりするマンガを集め続けています。
「たまごまごごはん」