日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『LIMBO THE KING』
『LIMBO THE KING』 第3巻
田中相 講談社 ¥581+税
(2018年1月5日発売)
人類を恐怖に陥れた「眠り病」は“記憶のガン”の異名をとる奇病。放置すれば3カ月以内に95%が死に至る感染症である。根絶したはずの「眠り病」だが、今また“新型”ウイルスが出現。
感染者の記憶に潜り、治療を施す特殊能力を持つルネと、体力自慢の海軍兵・アダムがタッグを組んで新型眠り病に挑む!
この“新型”が人為的に生みだされたらしいこと、感染源に関する情報も得られ、ますますドラマは緊迫!
この事実を2人の雇い主であるアメリカの国立機関もひた隠しにしているという設定、なんだか現実にもありそうな気がしてスリリング極まりない。
患者の脳内に「ダイブ」する治療行為自体も危険なのに、病気の秘密を知りながら隠蔽している国家も信用できない状況下に置かれ、ルネとアダムはしだいに信頼関係を築きつつある。
天才肌でクールなルネと、明るくて正義感が強く、すぐに身体が動くタイプのアダム。見るからにアンバランスな2人は悪態をつきつつも、互いの事情を少しずつ理解しながら息のあったところを見せるようになってきた。
シリアスなストーリーのなかに差しこまれるユーモラスな舌戦はほどよい息抜きでもあり、“バディもの”の楽しさを堪能させてくれる。
本巻では、独自に感染者に接触する2人の周辺が俄然キナ臭さを増す。
『このマンガがすごい!2018』オンナ編16位にランクインした本作は、ともかく単行本1冊ごとの情報量が濃い。
近未来SFであり、ミステリーであり、魅力的な“バディもの”で。
また「アメリカの空気感」の表現も見事で、一瞬たりとも読み手を素にかえらせない。
次巻が待ち遠しくとも、第1巻からまたゆっくりと読みかえすのも幸せな時間なのである。
<文・粟生こずえ>
雑食系編集者&ライター。高円寺「円盤」にて読書推進トークイベント「四度の飯と本が好き」不定期開催中。
ブログ「ド少女文庫」