日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『ミステリと言う勿れ』
『ミステリと言う勿れ』
田村由美 小学館 ¥429+税
(2018年1月10日発売)
2017年完結をみた全35巻の大作『7SEEDS』が、『このマンガがすごい!2018』オンナ編で堂々10位にランクイン!
大ヒット作『BASARA』に並ぶ代表作をものした田村由美の新作となれば、マンガ好きなら注目必至。
本作『ミステリと言う勿れ』は、大方の田村由美のイメージを裏切る会話劇である。
主人公はボワボワの天パ頭の大学生、久能整(くのう・ととのう)。
近所で整の同級生が殺害され、彼と折りあいのよくなかった整は殺人犯の容疑をかけられてしまう。
取り調べを受ける整は自分が不利に思われるようなことも口にするなど、至って通常運行モード。
刑事に向かって「バカなんですか」と切りかえすにしても決して挑発的ではなく平静そのものなので、刑事からしてみれば余計に腹が立つ!?
この「Episode1」で、整は持ち前の観察力と論理思考で、真犯人をあぶりだしていくことになるのだが、謎解きの鮮やかさだけでなく、整のキャラクターの魅力に夢中になってしまう!
整は何人かの刑事と相対するが、自分が置かれた状況にひるみもせず、事件に関連したことも関係ないことも淡々とよくしゃべること……。
マイペースに展開するおしゃべりのなかで、刑事たちは不意に仕事や、ときに私的な個々の弱みをグッと突かれて、不覚にも感銘を受けてしまったりもするのだ。
「Episode2」では、整がバスハイジャック事件に巻きこまれる。
思考力とおしゃべり力を武器に、この難局をどう収束させるのか!?
正義の味方というわけではなく、単に真理に興味があるだけ。
そんな男を主人公とした新感覚の素人探偵物語、自信を持ってオススメしたい。
<文・粟生こずえ>
雑食系編集者&ライター。高円寺「円盤」にて読書推進トークイベント「四度の飯と本が好き」不定期開催中。
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