日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『凪のお暇』
『凪のお暇』 第3巻
コナリミサト 秋田書店 ¥680+税
(2018年1月16日発売)
第8回「anan」コミック大賞を受賞するなど、若い女性を中心に話題を集めている『凪のお暇』の最新刊。
ヒロインは空気を読むことに必死になりすぎて、過呼吸でぶっ倒れた凪・28歳。
このままではダメだと会社を辞め、ボロアパートに引っ越し。営業エースでハンサムだが自分勝手なモラハラ男・慎二とも別れて、貧乏ながらも健やかな日々を楽しむなかで、母親や慎二との関係を見つめ直し、ようやく自分の気持ちに正直になる勇気を得る凪だったが、そのキッカケをくれた隣人のゴンさんとの関係にハマってしまい、すっかりペースを乱されて、まさかの自暴自棄な生活に――。
って、これって私のこと!? と悲鳴に近い共感を声をあげてしまう人は、きっと少なくないはず。
繊細で優しい……といえば聞こえはいいけれど、いまいち自分に自信が持てず、相手の気持ちばかり考えてはストレスを抱えている凪ちゃんがまた、マヌケなんだけど純粋でかわいくって、「なんとか幸せになって!」と応援せずにいられない!
慎二にしても、じつは仮面家族で育ったがゆえに凪にしか本音をぶつけられない歪んだ人間になった……という背景がしっかりと描かれていたり、ゆるゆると優しくて聖人のように思えたゴンさんが、じつは「メンヘラ製造機」の異名を持つ悪意なき人たらし(そういうヤツいるいる!)だったり、どの登場人物もダメダメで愚かだけれど、妙に憎めなくてかわいげがあるのだ。
そんな不完全な人と人が出会えば、楽しいだけじゃない事件もいろいろ起こる。
でも真の悪人は存在しない。ホッコリあたたかな世界観は本作のなによりの魅力だろう。
80年代「乙女ちっく」を彷彿させる、ふわふわファンシーな画風も「自分を変えたい女の子」の不器用だがピュアな成長ラブコメディにしっくりハマっていて。
とうもろこしは根元に割り箸を押しこんで2列ぐらい粒を外すと、あとは手で簡単にむしれるとか、ハイボールにチョコミントアイスを乗せるとフロート感覚でおいしいとか、随所に登場する「暮らしの知恵」も楽しすぎる。
次巻、凪ちゃんはメンヘラ製造機の誘惑から抜けだせるのか?
はたして人生リセットの結末は?
ハラハラドキドキしながら見守りたい!
<文・井口啓子>
ライター。月刊「ミーツリージョナル」(京阪神エルマガジン社)にて「おんな漫遊記」連載中。『音楽マンガガイドブック』(DU BOOKS)寄稿、リトルマガジン「上村一夫 愛の世界」編集発行。
Twitter:@superpop69