日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『京の縁結び 縁見屋の娘』
『このマンガがすごい! comics 京の縁結び 縁見屋の娘』
三好昌子(作) 君塚祥(画) 宝島社 ¥690+税
(2018年2月21日発売)
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時は江戸時代。
現在でいえば仕事紹介所である口入業を京都にて営む「縁見屋」に、ひとり娘がいた。名はお輪。
しっかり者で華やかな看板娘としてふるまい、店も繁盛し、何不自由ない暮らしをしているはずが、彼女には暗い影が差していた。お輪の母、祖母、曾祖母がそろって男児を生まず、26歳の若さで世を去っており、その四代目であるお輪は「祟りつき」と噂されている。
さらに、京の町が大火事になり、抱いていた男の子を失う悪夢にうなされ、お輪は自分のゆく末に不吉なものを感じていた。
そんなおり、店に愛宕山で修業をしているという修験者の男・帰燕が訪れ、縁見屋の敷地内にある火伏堂に滞在することになる。
長髪で口数が少なくミステリアスだが、すべてを見透かしているかのような帰燕に、お輪はおそれながらも惹かれていく。
古びた火伏堂に出入りするうち、縁見屋の初代である正右衛門から伝わる不思議な家宝「天狗の秘図面」、それに添えられていた、「千賀」という名の女性の髪など、いわくありげな品々が出てくる。
さらにお輪は、寝ているあいだにまるで魂が離れて歩きまわっているかのような、不思議な夢を見るようになる。
お輪の祟りをはらえないか、と問われて帰燕が告げた「知りたくもないことを知らねばならぬし聞きたくもない話を聞かねばならない」の意図は?
縁見屋にひそむ残酷な真実、さらに帰燕の正体とは……。
謎が謎を呼ぶ展開だ。
原作は「このミステリーがすごい!」大賞・優秀賞受賞作である小説。
マンガで趣ある江戸時代の京の風景が趣深く描きだされ、登場人物も感情豊かに活写されている。
帰燕もストイックで魅力的な男性だが、お輪に想いを寄せる幼なじみの東雲屋の徳次もよいキャラクターだ。一見軽くていい加減なものの、お輪を守りたい、という気持ちは本物。
一族に伝わる「悪縁」から、女性としての幸せに背を向けがちだったお輪が、よき縁につながることも願いたい。
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<文・和智永妙>
「このマンガがすごい!」本誌のほかWeb記事などを手がけるライター、たまに編集。とある学生街に在住し、いろいろと画策(だけ)しつつ、男児育てに追われる日々です。