日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『上海白蛇亭奇譚』
『上海白蛇亭奇譚』第2巻
君塚祥 新潮社 ¥580+税
(2016年1月9日発売)
舞台は1920年代の上海――といっても我々が知るものとは、ちょっと違う上海を見せてくれるのが本作『上海白蛇亭奇譚』である。
1927年 大国・夏楠(シャナン)国の大都市・上海は、世界大戦を経て倭国、大英王国、仏国、合衆国といった列強国の思惑が交錯するなか、いくつもの租界が乱立して極東一の大都市となっていた。
上海にある「白蛇亭」は、看板娘の花琳(ファーリン)が切りもりする中国茶館である。「白蛇亭」の2階には、怪しげなものを買いあさる倭人の壱岐島や、引きこもりの画家のダリオとった変わり者の間借人がいる。
また、何が本業かわからない常連客の合衆国人・リチャードなど、怪しげな人々が集まってくるのである。
そして、この世界では人間と人間ならざるものが共存している(わらいなく『KEYMAN』や架神恭介の『ダンゲロス』シリーズなどと同じような世界観なのだ)。
花琳は、母親が女禍(じょか)という妖(あやかし)で、父親は人間の「半妖」という存在。
それゆえに「人と妖がともに生きる世界」を創りたいという強い思いを抱いている。
一方、壱岐島は人間ではあるが、鬼道に通じており、妖を祓う力を持っている。
この2人が、上海で起こった妖がかかわる怪事件を協力して解決していくのである。
第2巻では、壱岐島の任務が明らかになる。リチャードは仮面を脱ぎ捨て、さらには大英帝国の魔女、花琳の兄といった新しいキャラクターも登場した。
今冬発売予定の第3巻が待ちどおしいところである。
<文・廣澤吉泰>
ミステリマンガ研究家。「名探偵コナンMOOK 探偵女子」(小学館)にコラムを執筆。現在発売中の「2016本格ミステリ・ベスト10」(原書房)にてミステリコミックの年間総括記事等を担当。また、「ミステリマガジン」(早川書房)にミステリコミックレビューを担当。