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『快楽ヒストリエ』 火鳥 【日刊マンガガイド】

2018/03/04


日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!

今回紹介するのは、『快楽ヒストリエ』



『快楽ヒストリエ』
火鳥 ワニマガジン社 ¥900+税
(2017年12月20日発売)


古賀亮一、道満晴明、三部けい、水s……うさくん、これらの名だたる人気漫画家にはある共通点がある。そう、彼らはみんな、エロマンガ雑誌でエロがメインじゃないマンガを連載したことがある作家なのだ!

若い頃はこの手のショートギャグマンガを読んでも「こんなのどうでもいいからさー、もっと女の裸を見せろよー」などと思ったものだが、歳を取るとこうした箸休め的なギャグやコメディの存在を非常にありがたく感じてしまう。だって、あの頃と違って持続力とか回復力がだいぶ衰えてるし……。
しかも、なぜかこれらのマンガのギャグはキレッキレなことが多い。成年向け雑誌だけあって縛りがゆるいからか、あるいはエロマンガ雑誌にあえてギャグマンガを描いてしまう異端の感性の持ち主だからか。とにかく読み捨てるにはもったいない作品が非常に多い。
そんな掘りだしものが多いエロマンガ雑誌連載のギャグマンガで今もっとも注目されているのが、「COMIC快楽天ビースト」で絶賛連載中の『快楽ヒストリエ』だ。

タイトルからもわかるように、本作のテーマはズバリ『歴史』。
「ニニギノミコトはなぜイワナガヒメの輿入れを断ったのか」という神話に隠された秘密から、島原・天草の乱や池田屋事件といった歴史的事件の裏側まで、これまでの歴史で葬られてきた真実を次々に暴いていき、その追及の手は国内だけにとどまらず、古代エジプトや古代ローマなど、海の向こうの出来事にまでも新たな光を当てていく。
そして恐ろしいことに、これらの歴史的事件の裏にはすべて『エロマンガ』が関わっているというのだ!
織田信長が死んだのも、小早川秀明が東軍についたのも、スパルタの兵士がわずかな人数でペルシア軍を足止めできたのもすべてエロマンガが原因だったのだ!
そう歴史を動かしてきたのはいつだってエロマンガであり、そのエロマンガを牛耳るワニマガジン社こそがフリーメイソン以上に歴史の裏で暗躍してきたのだ……まあ、ギャグマンガだからね、仕方がないね。

そんな歴史×エロマンガと異色のテーマを扱っている本作。
出落ちっぽさ全開なわりに、エロマンガをいかにして歴史的事件にこじつけるかというプロセスがけっこう丁寧だったり、登場する女性キャラがみんなかわいかったり、それどころか男キャラにも作画のカロリーが消費されていたりと、エロマンガ雑誌の片隅で「俺は藤ます先生のエロが読みたいのであって、こんな与太話はどうでもいいんだよお!」などと読み飛ばされてしまうにはあまりにもったいない内容だったのだが、今回ついに単行本化。
これまでは成年向け雑誌に掲載されていたため、18歳未満の読者は読むことができなかったが、単行本は全年齢OKだ。学生のみんなも堂々と本作を購入してぜひ本当の歴史を学んでほしい。
書いていることの9割は嘘だけど、「コンビニ誌は意外と厳しい」、「スク水のずらし挿入は粋」、「『コミフロ』はとっても便利」などと1割ぐらいの真実も載っているので安心してね!



<文・犬紳士>
養蜂家。好きなエピソードは『徳川綱吉幼女説』。
Twitter:@gentledog

単行本情報

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