『海のクレイドル』第2巻
永野明 新潮社 \560+税
(2014年10月9日発売)
本作がデビュー作とは驚きだ。
永野明の『海のクレイドル』は、緊張と弛緩の絶え間ないリズムで、こちらのページをめくる手を止めさせない。
主人公は、イギリスの貴族に仕えていた少女・モニカ。行方不明となった旦那様を探すため、旦那様が残した幼い子供エヴァンとともに旅立つ。
だが、その道のりは絶体絶命の連続。連れ戻そうとする追っ手。蒸気船に潜りこむための男装。爆発寸前の蒸気エンジン……。幼子を抱えた気丈な少女は、すんでのところで危機を逃れていく。
第2巻でモニカは、機関士の弟と偽ってなんとか蒸気船クレイドルの船員になる。だが、乗組員たちには受け入れられず、そのうえ、猛烈な嵐が船を襲う……。
心臓をキューッと掴まれ、一難去ってふーっとひと息。次はどんな荒波が待っているのか?
イギリスの海洋小説の文法に、女子を入れこんだら……。作者にはそんな狙いもあるような気がする。
<文・卯月鮎>
書評家・ゲームコラムニスト。週刊誌や専門誌で書評、ゲーム紹介記事を手掛ける。現在は「S-Fマガジン」(早川書房)でライトノベル評(ファンタジー)を連載中。
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