『逃げるは恥だが役に立つ』第4巻
海野つなみ 講談社 ¥ 429+税
(2014年10月10日発売)
『このマンガがすごい!2014』をはじめ、多数のメディアで高評価を受けた『逃げるは恥だが役に立つ』も、はや4巻に突入。
ひょんなことから一緒に住むことになった男女が、はからずしも互いに好意を抱くようになり……という設定は、『跳んだカップル』から『ホタルのヒカリ』まで、男女マンガ問わず、今も昔もラブコメの王道といえるが、本作がユニークなのは同居の理由が、大学院卒にして就職難民となったみくりとプライベートに干渉しない家政婦を探していた津崎のニーズが合致した末の「契約結婚」であり、2人の関係が「雇い主と従業員」という点だろう。
第4巻では、2人が周囲の疑惑を払拭するため、あれこれ奮戦するうちに、自分の微妙な気持ちの変化に気づき、理性と感情の間で悶々と戸惑う様が描かれてゆく。
「新婚感」を手に入れようと月2のハグを義務化したり、新婚旅行(社員旅行)帰りに思わずしてしまったキスをめぐって、セクハラかスキンシップか自問自答したり……。
あくまで軽~いラブコメタッチでおもしろおかしく読ませながらも、現代の就職~結婚問題への風刺もちらり。「好きな人の面倒を見るのがやりがいでしょって言われて報酬ないって、ある意味ブラック企業」といったセリフには「そうそうそう~」と激しく同意してしまいましたよ。
かと思えば、ドライなビジネス契約を交わしたものの、アッサリ恋に落ちてしまう2人の姿には、やっぱり恋愛って損得勘定じゃないよなあーと反省させられたり……。
結婚の有無にかかわらず、男女共に何かしら引っ掛かりがあるはずの一冊。
みくりと津崎の結婚生活の行方はもちろん、「高齢処女」の百合ちゃん、「異性童貞」の沼田さんなど、さりげに濃ゆいサブキャラの今後も気になるところ。まだまだ、目が離せません!
<文・井口啓子>
ライター。月刊「ミーツリージョナル」(京阪神エルマガジン社)にて『おんな漫遊記』連載中。「音楽マンガガイドブック」(DU BOOKS)寄稿、リトルマガジン「上村一夫 愛の世界」編集発行。
Twitter:@superpop69