『啓蒙かまぼこ新聞』
中島らも ビレッジプレス \750+税
全国蒲鉾水産加工業協同組合連合会が11月15日を「かまぼこの日」に制定した理由は2つ。
1115(永久3)年、平安時代のとある祝宴の図にかまぼこが描かれており、これは現在のところわかっている「初めて文献に登場したかまぼこ」だという。この年の並びを日に当てはめたのが理由のひとつ目。
2つ目は、昔は七五三(11月15日)のお祝いに、かまぼこを用意する風習があったことだそうだ。
さて、そこでとっておきのマンガを紹介しよう。その名も『啓蒙かまぼこ新聞』は、練り製品メーカーであるカネテツデリカフーズ株式会社の雑誌広告として80年代に掲載されたもの。
カネテツのキャラクター・てっちゃんと、そのお父ちゃんを主役に起用したマンガはなんともナンセンスで自由、遊び心だけで成立しているような作品ともいえる!?
作者はなんと、あの中島らも。彼が小説家としてデビューする以前、コピーライターとして活躍していた時代に手がけた伝説的なマンガである。あ、そういえば……マンガの内容はまったくかまぼこを啓蒙するものではありません(笑)。
おそらくファンが多かったのだろうが、広告として発表された本作が一冊にまとめられたのは奇跡的。そして、村上春樹が長文の解説を寄せているのも激レアではないだろうか。
ちなみに現在も、カネテツデリカフーズの公式サイトには、「啓蒙かまぼこ新聞」というページが存在している。
そのなかの「ごぼ天」というコーナーで、てっちゃんマンガを見ることができるので、まずはサイトのほうから訪れてみてほしい。
<文・粟生こずえ>
雑食系編集者&ライター。高円寺「円盤」にて読書推進トークイベント「四度の飯と本が好き」不定期開催中。
「ド少女文庫」