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『戦国自衛隊』第1巻 半村良(作) 森秀樹(画) 【日刊マンガガイド】

2014/11/22


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『戦国自衛隊』第1巻
半村良(作) 森秀樹(画) リイド社
(2014年10月27日発売)


戦国時代に自衛隊がタイムスリップ。近代兵器VS戦国武士の戦いをシュミレートした、半村良の『戦国自衛隊』は、様々なメディアで作品化されている。
劇画として描かれるのは、田辺節雄版に続いて2回目。この森秀樹版は、オリジナルストーリー。
自衛隊が「時震」によって戦国時代にタイムスリップした、主役が伊庭義明三等陸尉であるということ以外は、原作と別の展開になっている。

富士の裾野で大規模演習をしていた自衛隊は、突如戦国時代に飛ばされる。
彼らは現代へと帰るために、歴史に介入することでタイムパラドックスを起こそうと決意。本能寺の変から、織田信長を救出するという大胆な作戦に出る。
(原作では、織田信長が存在していない世界にタイムスリップしている)

もっとも目を引くのは、伊庭の行動だ。
「思いきって動いてみようと思う。そしてどうせやるなら、いいことをしよう」
彼らが一番最初に行うのが、野武士に襲われた村を近代兵器を使って掃討しよう、という作戦。自分たちのことより、人助けを優先する。
これがじつに理にかなっている。伊庭は、隊に目的を持たせることで、パニック状態になるのをおさえているのだ。
野武士との戦いは熾烈だ。ゆえに彼らの結束は固まっていく。「いいこと」をしている自負を感じ、皆が冷静さを保ち続けられる。

途中から出てくる信長のめちゃくちゃさとの比較もおもしろい。彼は自衛隊たちから銃を奪い取って、光秀軍に乱射しはじめるのだ。助けてもらってそれはないだろう……。
それでも伊庭たちは決して慌てない。

第1巻だけ読むと、伊庭たち自衛隊の方が、武士の心をわきまえているようにすら見える。
これは近代と過去の兵器合戦だけではない。近代日本人と過去の日本人の、心理合戦なのだ。
一瞬京都に富士が浮かび上がったりと、SF的にも大きな改変がされている様子。

ひょっとしたらこの「戦国自衛隊」は、現代に戻れるのだろうか?



<文・たまごまご>
ライター。女の子が殴りあったり愛しあったり殺しあったりくつろいだりするマンガを集め続けています。
「たまごまごごはん」

単行本情報

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