『すみれファンファーレ』第5巻
松島直子 小学館 \581+税
(2014年10月30日発売)
母と2人暮らしの小学4年生・すみれの日常を描く本作。第5巻ではクラス対抗の水泳大会、そしてロシア人少年・ソンチェフ君との別れもあり、学校での友だち関係がひときわ色濃く描かれている。
だれにも言えない辛さを抱えているがゆえに大人びていて、一見近寄りがたい印象のソンチェフ君。
彼が、年頃の少年らしい笑顔を見せるたびに、友だちというもののすばらしさを感じてならない。友だちだからといって、いつでも素直にものを言えばいいってものでもない。そんなことを学びつつある小学4年生たちの友情の深さがまぶしい。
人というのは「いいやつ」か「悪いやつ」か、「おもしろい」か「つまんない」か、「まじめ」か「ふまじめ」か……などと分けることはできない。
『すみれファンファーレ』を読んでいると、そんなことを改めて考えさせられるのは、登場人物たちのちょっとした表情や言動に、“その人”の要素がくまなく表現されているためだろうか。
ひとりの人間にはいろんな要素があって、そもそも本人だって自分のことをそう知りつくしているわけでもない。
すみれがソンチェフ君に抱くほのかな感情に気づいていく一連のエピソードは本巻のいちばんの読みどころといえるだろう。
すみれのことがもっと知りたい、長く読み続けていたい作品だ。
<文・粟生こずえ>
雑食系編集者&ライター。高円寺「円盤」にて読書推進トークイベント「四度の飯と本が好き」不定期開催中。
「ド少女文庫」