『ふだつきのキョーコちゃん』第3巻
山本祟一郎 小学館 \552+税
(2014年11月12日発売)
マンガ界における「シスコン兄貴大会」をやったら、上位に食いこめるキャラが、このマンガの主人公の札月ケンジだ。
本人はシスコンではないと否認している模様。しかしだれがどう見てもシスコン。しかも「かっこいいシスコン」だ。
気が強い妹のキョーコはキョンシー。力は人間の数十倍。御札のかわりがリボン。ほどくと吸血衝動を抑えられず、人を襲って血を吸ってしまう。
キョンシー化すると、ものすごく素直になる。お兄ちゃん大好き全開で、気弱そうに血を吸う姿は、吸血マンガとしてはかなりめずしい。
一番のみどころは、ケンジが妹のヒミツ秘密を守るために、わざと不良になっているところだ。
じつは成績優秀・品行方正・運動神経抜群と、極めて真面目な青年。キョーコのリボンがほどけて、正体がバレるのはまずい。だから、ケンジはワルを演じて、キョーコに人が近づかないようにしている。
今どき不良って! ズレた彼の行動一つひとつが、すべてキョーコへの思いやり。
兄の優しさへの気後れで友だちを作らなかったキョーコ。第3巻ではそんな彼女に、ヒカリという女子の友だちができる。よかったね!
ところが、ほかの怖がっている生徒たちと違い、ヒカリは不良が許せないという少女。ケンジを毛嫌いして攻撃してくる。うまくいかないもんだ……。
右ページの大ゴマでリボンしたまま怒鳴るキョーコ、「まったく何してたのよ!?」。
左ページに行くと、これまた大ゴマでリボンがとれて涙を流すキョーコ、「ゴメンねー!! 私のせいで」。
リボンが解けた時の、彼女の本心の開放感がものすごい。ケンジが身を挺して彼女を守る気持ち、わかる。
2人のまっすぐな兄妹愛を見た時、ニヤニヤが止まらなくなる。
<文・たまごまご>
ライター。女の子が殴りあったり愛しあったり殺しあったりくつろいだりするマンガを集め続けています。
「たまごまごごはん」