365日、毎日が何かの「記念日」。そんな「きょう」に関係するマンガを紹介するのが「きょうのマンガ」です。
5月28日はトキが「国際保護鳥」に指定された日。本日読むべきマンガは……。
『北斗の拳トキ外伝 銀(しろがね)の聖者』第1巻
武論尊・原哲夫(案) ながてゆか(画) 新潮社 ¥505+税
1960年の5月28日は「ニッポニア・ニッポン」の学名でも知られる、ペリカン目トキ科の鳥・トキが国際保護鳥に指定された日。
その学名が示すとおりにわが国とも縁深く、古くから親しまれていた鳥なのだが、近年では羽毛や食用を目的とした乱獲によって個体数が激減してしまい、絶滅の危機に瀕している種として知られている。
さて、マンガ愛好家が「トキ」と聞けば、やはり武論尊・原哲夫コンビが描く少年マンガの傑作『北斗の拳』に登場する北斗三兄弟(四兄弟)の次兄・トキを思い出してしまうだろう。
トキは伝説の暗殺拳法・北斗神拳歴代伝承候補者のなかでも随一の才能を秘めながらも、病魔に肉体を蝕まれたせいで伝承者の道を閉ざされてしまった悲劇の人であり、暴力で荒廃した世界のなかでも優しさを見失わず、常に周囲に献身的に接する殉教者然とした人物。
世紀末覇者と化した実兄・ラオウとの骨肉の争いは『北斗の拳』作中でも屈指の名シーンだ。
そんなトキを主役にすえたスピンアウト作品が『北斗の拳 トキ外伝 銀の聖者』(ながてゆか・画)である。
本作では『北斗の拳』では語られなかったトキをめぐる様々なエピソードが迫力の筆致で描かれており、トキを救世主と慕う「奇跡の村」でのエピソードや、トキを語る偽者・アミバとの確執などが本編でのミッシングリンクを違和感なくつなぎ合わせるていねいな仕事ぶりは原作ファンをうならせることうけあいだ。
かたや鳥、かたや天才拳法家と、名前以外の関連性が薄く感じる2つのトキだが、そのはかなさや優美さはどこか似ているところがあるかもしれない。
<文・一ノ瀬謹和>
涼しい部屋での読書を何よりも好む、もやし系ライター。マンガ以外では特撮ヒーロー関連の書籍で執筆することも。好きな怪獣戦艦はキングジョーグ。