『漱石とはずがたり』第2巻
香月ゆら KADOKAWA/メディアファクトリー \714+税
(2014年11月22日発売)
夏目漱石と彼を取り巻く友人や弟子のエピソードを、4コママンガで描いた『先生と僕』のスピンオフ企画第2巻。
こちらもお題は「漱石とその友人弟子」なれど、著者自身が誌面に登場し、文献をもとにマニアックな漱石エピソードをあーだーこーだ考察(邪推?)するスタイルが楽しい。
世の中には「作品と作者の人間性は別」という意見もあるが、どんなささいでプライベートなことでも(否、だからこそ!)知りたくなるのがファンであり、そんな生臭い部分にこそじつは作家の本質が潜んでいるのは、嵐山光三郎『文人悪食』や『文人暴食』、『文人悪妻』でも周知のとおり。
ここでも出生地ネタ、病気ネタ、喧嘩ネタなど、一見文学とはほど遠い漱石トリビアが炸裂。糖尿病検査の際の一升瓶尿事件、弟子の寺田寅彦の歯痛ポエムには大爆笑!
漱石と友人弟子の関係を少女マンガキャラで描き、キャーキャー萌える様は、ほとんどやおいの域。文化系女子の萌えバリエーションもここまで来たか!とうならされつつ、その圧倒的な愛のパワーに漱石ファンならずとも、深みに引きこまれる。
血の通った知識ってこうゆうもんだよなーと、知的好奇心を刺激される。これは学習マンガとやおいの奇跡の共存だ!?
<文・井口啓子>
ライター。月刊「ミーツリージョナル」(京阪神エルマガジン社)にて「おんな漫遊記」連載中。「音楽マンガガイドブック」(DU BOOKS)寄稿、リトルマガジン「上村一夫 愛の世界」編集発行。
Twitter:@superpop69