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12月11日はタンゴの日 『タンゴの男』を読もう! 【きょうのマンガ】

2014/12/11


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『タンゴの男』
岡田屋鉄蔵 宙出版 660+税


12月11日は「タンゴの日」。アルゼンチンでは国家的記念日(祝日)だ。
世界無形文化遺産であるアルゼンチンタンゴに対して、多大の功績を遺した歌手のカルロス・ガルデルと作曲者のフリオ・デ・カロ。この2人が奇しくも同じ誕生日(12月11日)だったことから、1977年に制定された。アルゼンチンというお国柄が表れた、なんともイキな祝日である。

このアルゼンチンタンゴをテーマに、運命的な出会いを果たす男たちの熱情を描いたのが、2008年にリリースされた岡田屋鉄蔵のデビューコミックス『タンゴの男』。
一流ダンサーにして数々の男と浮き名を流すアンジーは、ある日、ラテンの血を引くハーフの日本人・ヒロと出会う。タンゴのパソ(ステップ)のなかでも一番重要だと考えている「GIRO」(ヒロ)と同じ響きを持つ名前に加え、懐かしいスペイン語を話すことで興味を持ったアンジーは、彼をタンゴの世界に誘う。
やがて肌を重ねる2人。ヒロはノンケだったが、満たされぬ想いを包容力のあるアンジーに委ねていく……。

表紙を見ていただければおわかりいただけるとおり、色気のある大人の男たちが主人公。
当然セックスもしっかりと描かれているが、BLファンならずともすんなり感情移入できるのでご安心を。ノンケのヒロがアンジーに抱かれ、嫌な気持ちにならない不思議な感覚に戸惑いながらも、快楽に身もだえする様がキュートに描かれているからだ。

もともとアンジーは男であるとか女であるとか、いちいちこだわっている人間ではない。感じたことを信じて、大好きな相手と「触れ合いたいときに触れあいたい」と考えているだけだ。
そのアンジーが40歳近くになって初めて「ゆっくり時間をかけて関係を育てたい」と思えた存在がヒロである。ヒロもまた、これまでの恋愛では味わったことのない心地よさを全身で受け止める。
求め、満たし、癒し、救うアルゼンチンタンゴを通して描かれた人間賛歌の傑作だ。

なお、2013年に刊行された『タンゴの男 the final』は、描き下ろしの最終章に未収録作品を加えた新装版。こちらもオススメ!



<文・奈良崎コロスケ>
68年生まれ。東京都立川市出身。マンガ、映画、バクチの3本立てで糊口をしのぐライター。中野ブロードウェイの真横に在住する中央線サブカル糞中年。
「ドキュメント毎日くん」

単行本情報

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