『CAPTAINアリス』第1巻
高田裕三 講談社 \552+税
今から111年前(1903年)の今日、アメリカのノースカロライナ州にあるキル・デビル・ヒルズにて、ライト兄弟が動力飛行機の初飛行に成功した。
この時代、すでに陸では車が、海では蒸気船が幅をきかせていたが、空(飛行機)だけは発展途上であった。そんななか、自転車店を営みながら研究を続けてきたウィルバー(兄)とオーヴィル(弟)は、「科学的に不可能」と言われていた飛行機を、ついに具現化したのだ。
以降、またたく間に開発が進み、第一次世界大戦では早くも軍事利用された飛行機。
1930年代には世界的に旅客輸送が広まり、1950年代には日本でも運行がスタートした。旅客輸送はまだ100年にも満たない、よちよち歩きの産業なのだ。
歴史の浅い旅客機の操縦士は基本的に男社会である。だが日本でも、2010年7月に初の女性機長が誕生。「美人すぎる機長」として有名になったJALエクスプレスの藤明里(ふじあり)さんだ。
くしくも、この喜ばしいニュースの前年(2009年)に「イブニング」でスタートしたのが、凄腕の女性パイロットが活躍する『CAPTAINアリス』である。
エリートパイロットの父から英才教育を受けていた長谷川ありすは、超一流の操縦技術と知識を持っているが、アクシデントが起こるたびにテンションが上昇し、あろうことか笑い声まであげてスリリングな状況を楽しむ風変わりな26歳女子。
乗客にとってはなんとも恐ろしいパイロットだが、絶望的な状況下でも決して生還を諦めない頼もしさも持ちあわせている。
そんな彼女に降りかかるスケールの大きな事件の数々はハラドキ必至! ベテラン・高田裕三らしい確かな構成力と、キュートなヒロイン像が楽しい航空エンターテインメントに仕上がっている。
昨年夏に惜しまれつつも全10巻で終幕を迎えたが、これを機にぜひご一読いただきたい名作だ。
<文・奈良崎コロスケ>
68年生まれ。東京都立川市出身。マンガ、映画、バクチの3本立てで糊口をしのぐライター。中野ブロードウェイの真横に在住する中央線サブカル糞中年。
「ドキュメント毎日くん」