『死にたくなるしょうもない日々が死にたくなるくらいしょうもなくて死ぬほど死にたくない日々』
阿部共実 秋田書店 \600+税
(2014年12月10日発売)
本誌『このマンガがすごい!2015』で、『ちーちゃんはちょっと足りない』がオンナ編第1位に選ばれるなど、熱い支持を集める阿部共実の最新単行本。
10代女子を中心に、ちょっと(かなり)残念な人々のうまくいかない日常を描いたオムニバスショートというスタイルといい、水玉背景のジャケットデザインといい、これは著者の代表作『空が灰色だから』の続編、という位置づけになるのだろう。
実際、主人公らの暗黒&こじらせっぷりといい、タイトルにも顕著な、まわりくどい独特のセリフまわしといい、唐突に始まって最後までハッピーエンドかバッドエンドかわからないまま謎のテンションで突っ走るストーリーテリングといい、「これぞ阿部共実!」な世界がさまざまなテイストで楽しめる。
『空が~』に比べると、わかりやすい禍々しさや狂気は影を潜めているため、ライトになった印象を持つ人もいるだろう。
ところがどっこい、『おねがいだから死んでくれ』のような、一見、救いのない作品にも、たんに「ブラック」では終わらない深い詩情や絶望の底の光のようなものが感じられるのは、著者の成長であり変化だ。
「本当のお前なんかそんなんないって」
「まあ別に間違っててもいいじゃねえか この世は正解を選び続けないと失格になるクイズ選手権か何かかよ」
そんな悪態を突いたセリフにも、うまくいかない自分や世界への「呪詛」ではなく「肯定」が感じられ、ぐっと胸を突く。
わずか3ページで文学的深みにさらりと到達した超短編「深い悲しみ」は必読!
揺るぎない世界観を提示しつつ、まだ見ぬ新境地を感じさせる1冊だ。
<文・井口啓子>
ライター。月刊「ミーツリージョナル」(京阪神エルマガジン社)にて「おんな漫遊記」連載中。「音楽マンガガイドブック」(DU BOOKS)寄稿、リトルマガジン「上村一夫 愛の世界」編集発行。
Twitter:@superpop69