『ベルリンは鐘』第1巻
ニャロメロン 秋田書店 \600+税
(2014年12月10日発売)
不意にリツイートされた4コママンガが目に入り、ついつい吹き出してしまう……Twitterユーザーならば誰しも1度や2度はそのような経験があるはず。いや、実際は1度や2度どころではすまないかもしれない。
それもそのはず、現在「Web4コママンガ」というジャンルが、流行の兆しを見せているのだ。
Twitterや画像投稿サイト「pixiv」など、4コママンガの投稿が容易なSNSの隆盛による発表の場の誕生と、4コママンガのフォーマットとしての敷居の低さが認知されたことで、「web4コママンガ」は手軽な表現方法として一般化。熟練のプロ漫画家から、昨日はじめて4コママンガを描いたというようなユーザーまで、幅広い層に親しまれているものとなっている。
また、間口の広さはそのまま文化の豊穣にもつながる。特異な創作基盤ゆえのユニークさを持つ、非凡な作家がWEB4コマの世界から、次々と生まれているのだが、そのなかでも一際目を引く新進気鋭の漫画家が存在する。
カートゥーン作品のようにポップな絵柄でありながら、実験的な試みを多く取り入れたテクニカルな内容という、アンバランスともいえる魅力によってTwitterユーザーから絶大な支持を受けている、ニャロメロンである。
高い作品完成度と驚異的な投稿ペースにより注目を集めた彼は、長くWEB上のみで活動していたものの、今年6月に自身のwebサイト「週刊メロンコリニスタ」の作品をまとめた処女単行本『濃縮メロンコリニスタ』を刊行。商業媒体での活動を本格的に開始した。
そして秋田書店のWEB雑誌「Championタップ!」にて、満を持して開始された商業初連載作品が、この『ベルリンは鐘』だ。
本作は主人公のリンガベルとビッグベル姉弟を中心としたキャラクターたちの日常生活を描いた作品。それまでニャロメロンが得意としていた、無駄を削ぎ落としたソリッドな作風とは少し異なり、キャラクター同士の掛け合いを中心とした幾分か読みやすいスタイルが特徴だ。
とはいえ、もちろんニャロメロン流のハイコンテクストなセンスは健在。商業におもんばかって「ヌルい」作りになっているのでは……という心配は無用である。むしろ作風に幅が出たことで、ギャグのひとつひとつが更に深化した印象となった。
4コママンガ特有の「とっつきやすさ」を有しながら、何度でも楽しめるスルメ的な楽しみ方も本作のポイントだ。
書店で見かけたら、ぜひカバーに書かれたとおり「持ってけドロボー!(レジに)」してみてはいかがだろうか。
<文・一ノ瀬謹和>
涼しい部屋での読書を何よりも好む、もやし系ライター。マンガ以外では特撮ヒーロー関連の書籍で執筆することも。好きな怪獣戦艦はキングジョーグ。