『青春しょんぼりクラブ』第9巻
アサダニッキ 秋田書店 \419+税
(2014年12月16日発売)
青年心理研究会。「他人の恋愛を観察・研究する」サークルだ。
そのメンツが、しょんぼりすぎる。
桃里にまは、好きになった男の子がことごとく他の女の子とカップルになる、という超絶当て馬体質。研究会の創設者の依子はなんでもかんでもデータを集めて解析する、なかばストーカー。隠岐島はとある理由で女装ですごしていた。簸川は見た目美形なのに二次元しか愛せない。
出てくるキャラ全員、なにかしらこじらせている。
この作品で描かれるのは基本恋愛関係。メインキャラたちが好きだという気持ちを伝える場面もある。ところが、告白シーンはそれほど重要なパートとして描かれていない。
テーマになっているのは告白自体ではなく、「自分は自分の『好き』を理解できているのだろうか」という部分だ。
隠岐島は、にまの告白にNOと答える。にまは「フラれたんだな、でも諦めない!」とがんばっている。
ところが、真に悩んでいたのは隠岐島のほう。第8巻では「むしろオレのほうがにまちゃんの対象になるべきじゃないって思ってる」という。
多くのキャラが感じている「にまは、純粋すぎて、怖い」。自分の心の歪みが、純粋なにまと接することで、表に出ることを恐れている。自分が好きになれていない。
第9巻では、隠岐島たちが修学旅行に行く。にまは1年生なので、お見送り。
隠岐島に電話をして、勢いで「好きです、ふられてるからなんべん言っても、こ、こ、こわくないし!」と言う、にま。あまりにも真っ直ぐだ。
今はかなわないだろう。みんなが「自分自身を好きだ」と思えないかぎり、しょんぼりは続く。
もっと迷走してしょんぼりすればいい。それが青春ってもんだろ。
<文・たまごまご>
ライター。女の子が殴りあったり愛しあったり殺しあったりくつろいだりするマンガを集め続けています。
「たまごまごごはん」