『長編冒険漫画 鉄腕アトム [1956-57・復刻版]』第1巻
手塚治虫 復刊ドットコム \5,700+税
（2014年12月17日発売）

巨匠・手塚治虫の代表作『鉄腕アトム』を日本で知らない人はいないだろうが、その“マンガ”を読んだことのない人は意外に多いのかも!?　だとしたら、本当にもったいないと思う。

もちろんアニメ版にもよさはあるけれど、マンガならではのアトムの表情の豊かさ、一挙手一投足のチャーミングさを、ぜひとも味わってほしい！　そして、頻繁にはさみこまれるギャグ、会話のリズムのよさも絶品。
アトムが活躍する未来都市や南の島などなど、見ごたえある背景の描きこみは、物語のロマンにぐいぐいと引きこんでくれる。冒険活劇としての充実したストーリー、躍動感あるアクション、少年マンガらしい痛快さ……すみずみまでマンガの楽しみに満ちていて、今読んでもやっぱり傑作なのである。

本書は『鉄腕アトム』最初の単行本の、初の完全復刻版。シリーズ全3巻は1956～57年に発行されたもので、このたびじつに58年ぶりの初復刻となった。
ハードカバーで細部の仕様も当時のまま。なかのページも、懐かしいムードの2色印刷あり、赤や緑の1色印刷のページもありと、ビンテージ感が漂う。
マニアならずとも、手に取ってみてほしいお宝アイテムだ。

＜文・粟生こずえ＞
雑食系編集者＆ライター。高円寺「円盤」にて読書推進トークイベント「四度の飯と本が好き」不定期開催中。
「ド少女文庫」