『バキどもえ』第3巻
板垣恵介（キャラクター原案）さいとうなおき（漫画） 秋田書店 \419+税
（2015年1月8日発売）

『グラップラー刃牙』、『バキ』、『範馬刃牙』、そして最新章『刃牙道』……濃厚なキャラ立てと独特すぎる台詞まわしや戦闘法の描写によって、格闘マンガ界のビッグタイトルになった『刃牙』シリーズ。
それをディフォルメ絵中心のドタバタギャグにしたスピンオフ作品が『バキどもえ』である。

基本は1編5ページのショートコミックで、毎回ひとつのお題をつけて刃牙キャラたちにコントをさせる作りになっている。
マッチ売りの刃牙が、寒さをしのぐためにつけた火の向こうに烈海王の幻影を見てシャドーファイトしだす「マッチ売りの少年ッ」。
愚地独歩が料理番組で自分のしとめた虎を使ったメニューを披露する「神心クッキングッ」。
学ランを着た烈海王とセーラー服姿の寂海王（♀）が甘酸っぱい恋愛模様を繰り広げる「海王白書ッッ」などなど……。

刃牙や勇次郎、花山薫などの主要人物はもちろん、登場エピソードはごくわずかな少年・ルミナ君まで細かく拾いあげ、元作品のかっこいい構図の数々を笑いへ転換する手際がお見事である。
刃牙のカノジョの梢江ちゃんがふつーにかわいいのも見どころで……って、いやいやオリジナルの梢江ちゃんもかわいいですよね！　ちょっと通好みな感じがするだけで……。

週刊少年チャンピオンでは『浦安鉄筋家族』シリーズで、ときどき範馬親子パロディのキャラを使った回があり大ウケしているが、あれを単行本まるごとたっぷりのボリュームで楽しみたい、というニーズに応えるのがこの『バキどもえ』と言えるだろう（ちなみに、この題名はやはりチャンピオン系列のギャグマンガ『みつどもえ』がベースである）。

いちおう今回発売された第3巻で最終巻となったが、本家が続いているかぎりは新作が描かれる目は残っている。期待しておこう。

＜文・宮本直毅＞
ライター。アニメや漫画、あと成人向けゲームについて寄稿する機会が多いです。著書にアダルトゲーム30年の歴史をまとめた『エロゲー文化研究概論』（総合科学出版）。プリキュアはSS、フレッシュ、ドキドキを愛好。
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