『魔法陣グルグル2』第1巻
衛藤ヒロユキ スクウェア・エニックス \562+税
本日は2月14日ということで、聖バレンタインデーに関係するマンガを紹介! ……するのもいいと思うのだが、いささか安直な思考である気もする。
ほかになにか、パンチの効いた記念日はないものか……と調べてみたところ、バレンタインデーよろしく、親しい人に対して親愛の情を込めたプレゼントを送る記念日がほかにもあるではないか!
そういうわけで、2月14日は日本ふんどし協会が定めた「ふんどしの日」である。
「2(ふん)」「14(どし)」という、少々こじつけにも思える語呂合わせで選ばれた本日は、愛する人にふんどしを渡す日だというのだ!
日本の伝統的な下着でありながら、その男らしさあふれる外観や語感から、見るものに強力なインパクトを与え続けているふんどし。
マンガ界隈における「ふんどし」と聞いて、筆者が思い出すものといえば、エニックス(現スクウェア・エニックス)が刊行していた『ドラゴンクエスト4コママンガ劇場』である。
国民的TVゲーム作品『ドラゴンクエスト』シリーズを題材としたパロディ4コマ集である本作は、柴田亜美や西川秀明など、今日の有名作家も多く執筆。
名作・奇作・珍作がずらりと並ぶバラエティに富んだ内容が好評を博し、数十冊にも及ぶ単行本が発売された人気シリーズとなり、マンガ業界にゲーム作品4コマブームを引き起こした立役者としても知られている。
そのなかでも読者の話題を呼んだのが「落ち着け!」というタイトルの作品だ。
混乱した勇者が大根を振りかざしながら「ふんどし!!」と叫ぶシュールなネタは、ドラクエ愛好家たちに多大な衝撃を与え、「ドラクエギャグといえばふんどし」とまで認識されるほどの、象徴的な一作となっている。
なんと、最新作『ドラゴンクエストX』では、ついにこのネタがゲームに逆輸入されたというのだから驚きだ。
「落ち着け!」の作者である衛藤ヒロユキ氏は、その後、月刊少年ガンガンで『魔法陣グルグル』を連載開始。
「ドラクエ的お約束」をパロディしたファンタジー作品である本作は、それまで得意としていたシュールギャグに加え、ファンシーな絵柄や少年少女の成長物語などの多面的な魅力を盛り込んだ意欲作として、2度に渡るアニメ化や、スピンオフ作品『舞勇伝キタキタ』が作られるというヒット作品になった。
また、作品のマスコットキャラクター的存在である妖精ギップルは、マント装束にふんどし一丁という珍妙な出で立ちであり、作品を越えてなお「ふんどし」というモチーフにこだわり続ける作者の執念が伺えるのにも注目したいところだ。
現在は9年ぶりの続編『魔法陣グルグル2』が連載中。キレのいいギャグや、胸の踊る冒険活劇は前作と比べても遜色のないクオリティであり、往年のファンにもぜひご覧になってほしい。
本日「ふんどしの日」にこそ、日本一のふんどし作家・衛藤ヒロユキの作品を読んでみるのはどうだろうか?
<文・一ノ瀬謹和>
涼しい部屋での読書を何よりも好む、もやし系ライター。マンガ以外では特撮ヒーロー関連の書籍で執筆することも。好きな怪獣戦艦はキングジョーグ。