『さんかく窓の外側は夜』第2巻
ヤマシタトモコ リブレ出版 \628+税
(2015年2月10日発売)
「ゾッとする戦慄とお尻が浮くような快感… 何だっ? こんなの初めて…だ!」というのは、最新刊2巻の帯に寄せられた、『呪怨』シリーズの清水崇監督のコメント。
言いえて妙で、ヤマシタトモコ『さんかく窓の外側は夜』は、そんな不思議な味わいと感覚に満ち満ちた作品だ。
心霊を扱ったホラーという意味では、まさゾッとする戦慄あり。そして主人公コンビの除霊方法に、お尻が浮くような快感あり!?
物語は、昔から不気味なモノが視える体質の書店員・三角康介(みかどこうすけ)が、除霊師を生業とする冷川理人(ひやかわりひと)に無理やり相棒とされてしまうところからスタートする。
除霊師としては凄腕ながら、人として欠落も多い冷川。はからずも、三角はそんな彼のサポート役も務めることになる。そして相棒としての決定的な役目は、その身体を冷川に差しだすことだ。
冷川は、三角の身体に自分の身体を通すことによって、より力を発揮できる。そのため三角の体内に手を突っこみ、掻きまわして、深いところに触れていくのだ。
いっぽうの三角も、気色悪さを感じながらも、気持ちよさも覚えてしまって……。
実際に触れあうのは魂ながら、その際の冷川のSぶり、三角のMぶりは、ドキッともニヤッともさせるもの。ある種、カラミさながらで、まさにお尻が浮くような快感がそこにはある。
BL作品として、そのカラミに笑いもエロスも見出すことができるが、同時に悲しみもある。
三角はその能力のため、奇異に見られることを恐れて他人の目を避けてきた男。また冷川にも何か事情がありそうだ。そんな2人が触れ合うということ。
その能力、そして能力からくる偏見は同性愛のメタファーのようにもなっていて、そう考えると本作はさらに深い。
またお尻が浮くような感覚は、掛けあいの楽しさ、キャラクターの個性、そしてストーリーテリングの巧さからも感じられて、作品性のおもしろさにこそ快感ありだ。
2巻では、殺人事件を引きおこしていると思われる少女で、呪いを撒き散らす存在である非浦英莉可(ひうらえりか)と2人が対峙することになる。
彼女の正体と、求めるものとは?
BLのテイストが苦手な読者もいるかもしれないが、それこそ苦手という清水崇監督も「酔いしれてしまいました」(2巻帯より)。さりげなくも圧倒させる霊の描写、また人間こそ怖いと思わせる描写も多々あって、エンタテイメントとしてはもちろん、ミステリーやサスペンスとしても一級品。
海外ドラマのようなハードさと観念的なセクシーさのある作品だ。ひとたび読み始めれば、それこそ三角と冷川の接触さながらに、グイグイ引きこまれて、魅せられてしまうはず。
<文・渡辺水央>
マンガ・映画・アニメライター。編集を務める映画誌「ぴあMovie Special 2014 Autumn」が9月17日に発売に。『るろうに剣心 京都大火編/伝説の最期編』パンフも手掛けています。