『SHIORI EXPERIENCE ジミなわたしとヘンなおじさん』第3巻
長田悠幸/町田一八 スクウェア・エニックス \590+税
(2015年2月20日発売)
地味な英語教師・本田紫織。
27歳の誕生日、彼女のもとにギターの神様、ジミ・ヘンドリックスの幽霊が現れた。
学生時代ギターが大好きだった彼女。父親がバンドに対して拒絶反応を示し、ギターができなくなってしまった。
弾きたくても、弾けない。そんな彼女の背中を押すべく、ジミヘンは彼女にジャックイン(憑依)。紫織は無理やりギターを弾かされることになる。
やりたいことを諦めかけていたヤツラが「それでも、弾きたい」と、自分の魂の叫びにしたがって、ふみこえていく物語。
サックスの井鈴は、吹奏楽部で相手にされず、追いだされてしまった。
野球部部長の台場は、責任に追われて叩きたいドラムにさわれなかった。
目黒は学校内で暴力事件をおこしたと後ろ指をさされ、歌を歌えなくなってしまった。
目黒の親友だった川崎は、目黒の歌を待ってピアニカを吹き続けていた。
彼女たちの軽音楽部は、周囲から冷たい嘲笑をあびる。特に彼女たちへのいじめ描写はかなりキツめ。ジミヘン幽霊の存在で空気は明るくなっているものの、えげつない出来事が多い。
そんな環境だからこそ、彼女たちの「やりたい!」という思いはバネとなってはじけ飛ぶ。ふみだす決意をした演奏は、解放感満点。問題が解決するわけではないけど、思いは全部音にのせればいい。それがブルースってもんだろ?
特に3巻で、「デイドリームビリーバー」の歌詞と、我慢し続けた目黒の想いが重なる瞬間は、最高にエモーショナルなのでぜひ見てほしい。
ところでジミヘンいわく、紫織は27歳が終わるまでに伝説を残さないと死んでしまうらしい。たしかに27歳で死んでいるミュージシャンは多い。
はたして紫織は伝説なんて作れるのか。しかも3巻ラストでは、ニルヴァーナのカート・コバーンも登場。ジミヘンとカートのセッションなんて、見たすぎるだろ……。
物語は3巻がスタート地点と言っていい。ぜひ一気に読んでみてほしい。
<文・たまごまご>
ライター。女の子が殴りあったり愛しあったり殺しあったりくつろいだりするマンガを集め続けています。
「たまごまごごはん」