『ママレード・ボーイ little』第3巻
吉住渉 集英社 \419+税
(2015年2月25日発売)
単行本を開いて早々、思わず「おおっ!」と声が漏れた。
90年代の「りぼん」を代表するヒット作のひとつであり、TVアニメでも強いインパクトを残した『ママレード・ボーイ』。その続編である今作は、前作の主人公である光希と遊のカップルをはじめ、懐かしいキャラクターたちが続々と姿を見せ、かつてのファンを楽しませてくれている。
3巻ではのっけから、旧作でファンの気持ちを振り回した“あの”少女が再登場。
10代のころと同じ、小悪魔然とした雰囲気を漂わせつつも、オトナの女性としてのたしかな成熟を感じさせる。そんな描写がじつに魅力的で、たまらない。
とはいえ、あくまで作品の本筋は、立夏と朔、碧という新世代キャラクターたちの恋模様。そちらの魅力も、しっかりとしたものだ。
血のつながりはないが、同じ家で家族同然に育った立夏と朔。
朔は立夏に恋愛感情を向けるが、立夏は同級生の碧に思いを寄せる。年上の幼なじみと恋愛関係にあった碧は、当初は立夏のことをただの友人だと考えていたが、失恋をきっかけに、異性として急接近。
朔のまっすぐな愛情に対する、軽いあてつけめいた気持ちもあってアプローチした碧だったが、立夏の陽性な魅力に触れるうち、真剣に心惹かれるように。そんな碧の心境の変化は、周囲の人間関係にも影響を……。
こんな、ともすればドロっとしてしまいそうな設定や展開を描きながら、読み味はサラリとしていて、嫌味がない。かといって、情緒に欠けるかといえば、そんなことはない。胸がキュンとするような叙情的なシーンもたっぷりと詰めこまれているのだ。
理知的で、都会的で、おどろくほどに洗練されている。でもあくまで、ジャンルは「少女マンガ」。そんな吉住渉にしか描けない世界が広がっている。
前作のファンは当然必読。でも、そこだけに独占させておくのは、もったいない!
<文・後川永>
ライター。主な寄稿先に「月刊Newtype」(KADOKAWA)、「Febri」(一迅社)など。
Twitter:@atokawa_ei