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3月20日は上野動物園が開園した日 『ケモノキングダムZOO』を読もう!【きょうのマンガ】

2015/03/20


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『ケモノキングダムZOO』第1巻
もち 講談社 \581+税
(2011年9月7日発売)


今から130年あまり前、明治15年の3月20日。日本で一番古い動物園がオープンした。

もとは日比谷の山下町博物館にいた動物を上野公園へ移し、園内の博物館に付属する動物園を設けたのが始まりだった。
所管は農商務省から宮内庁に変わり、その後さらに大正時代に入って東京市に移渡。その際「天皇陛下よりの賜り物」という意味の「恩賜」がついて「恩賜上野動物園」すなわち上野動物園になったのである(現在の運営は公益財団法人東京動物園協会)。

動物園として国内トップクラスの入園者数を誇る上野動物園には、500種類以上もの動物たちがひしめいている。
そこで人々は、日常世界から離れたところにある異国を訪れ見物するような趣を味わうことになる。

そして、そんな上野動物園を「国みたい」どころか本当にひとつの国家という設定で描いたマンガがある。
その名もずばり『ケモノキングダムZOO』。『キューティクル探偵因幡』で知られる漫画家・もちの作品だ。

作中の上野動物園にはアッパーヤードという国名がついている。「上」=アッパー、「野」=ヤードというシャレだ。
人間は登場せず、国外もどうなっているかは詳細不明。国(動物園)を一個の箱庭にして、そのなかで多種多様な動物たちが異民族の集まりめいて生態の違いや天敵関係などからドタバタ騒動を繰り広げるコメディになっている。

物語は、アッパーヤード国を大いなるカリスマによって統治していた笹王パンダが死んでしまうところから幕開ける。
次の王になったレッサーパンダはアッパーヤードで一番の愛玩動物。超カワイイが威厳がない。そのため王座を狙うものが続出する。
国(園内)を東西に割って内戦を起こそうとするライオンが武闘派カンガルーと激突したり、ニホンザルの策略でレッサーパンダ王の息子が誘拐されるもあまりのかわいさに高待遇を受けたり、パンダ王の隠し子が見つかり大騒動が起きたり……でもやっぱりどこまでいっても空気はゆるゆるに愉快なのだ。

『バケツでごはん』『しろくまカフェ』のように動物園マンガはいくつかあるが、それらはどちらかといえば人間との共存や、動物からの視点を通して人間を描く要素が入っている。
対して、本作は徹底して動物同士がぶつかる構図をとっている。そのうえで動物の擬人化以上に「上野動物園の擬国化」という舞台レベルのファンタジーに重点を置いたのが特徴といえるだろう。

いったん本作を読むと、リアル上野動物園に行った時に動物たちを見る目が変わるかも……?



<文・宮本直毅>
ライター。アニメや漫画、あと成人向けゲームについて寄稿する機会が多いです。著書にアダルトゲーム30年の歴史をまとめた『エロゲー文化研究概論』(総合科学出版)。プリキュアはSS、フレッシュ、ドキドキを愛好。
Twitter:@miyamo_7

単行本情報

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