『ロックミーアマデウス』第1巻
イナベカズ 講談社 \602+税
(2015年3月6日発売)
「クラシック音楽×バトル」――この漫画の帯とカバー裏表紙には、こう明記されている。
そう、『ロックミーアマデウス』はものすごく端的にそういう物語だし、それだけでワクワクする人、けっこういるのでは? はい、私もそのひとりです(笑)。
主人公・響音哉(ひびきおとや)は、音大付属高校に通っているくせに、クラシックも全然知らずに、ロックばかり聴いている青年。
ある日交通事故に巻きこまれた音哉は、死の間際に不思議な空間の歪みを見る。そしてなぜか、無傷で助かってしまうのだ。
やがて退院した音哉の耳に、聞こえてくる謎の声。それこそが、彼がこれからともに戦うことになる「アマデウス」からのメッセージだった……。
このマンガを彩るバトルの形態は「諧調(ハルモニア)」。音哉とアマデウスが一体となり、すばらしいハーモニーを奏でてこそ、本当の力が発揮される。
音哉の役割は音楽に集中し、想像力を使って、音楽をバトルの力に換えていくことだ。
クラシック嫌いだった音哉だが、モーツァルトの名曲を耳にするうちに、圧倒的な想像力で敵を震撼させる。
このあたりの表現はじつにマンガならではの迫力と美しさで、ぜひその目で確かめてほしい。
音楽の三要素であるリズム、メロディ、ハーモニーのうち、クラシック音楽の顕著な特徴となるのが、3番目のハーモニーだ。
オーケストラの演奏を聴けばすぐにおわかりかと思うが、たくさんの楽器の音色がそれぞれ響き合い、引き立て合って、あの美しい音楽が生み出される。それを「諧調(ハルモニア)」という言葉で、バトル要素として表現したセンスは絶妙。
そのほかにも、たくさんのおもしろい設定がちりばめられている。
できることなら、作中に出てくるクラシック曲をBGMにしつつ、バトルシーンを楽しんでいただきたい。
特に、『フィガロの結婚』の序曲、また交響曲第38番『プラハ』。どちらもモーツァルトの名曲で、「クラシックってつまんねーじゃん? リズム乗らないしベース薄いしドラムねーし」と音哉は言うけれど、ドラムとかベースとか無くてもいけるじゃん? と思えるほどの軽快な曲。ぜひぜひどうぞ。
ノレるよ! いやマジで(笑)。
<文・山王さくらこ>
ゲームシナリオなど女性向けのライティングやってます。思考回路は基本的に乙女系&スピ系。
相方と情報発信ブログ始めました。主にクラシックやバレエ担当。
ブログ「この青はきみの青」