『鋼鉄日記(めたにっき) 』
安西信行 竹書房 \580+税
(2015年3月27日発売)
『烈火の炎』で1990年代以降のバトル系少年マンガを盛り立て、2000年代後半に休筆と休業を挟んだ漫画家・安西信行。
その近況をつづったエッセイマンガ『鋼鉄日記(めたにっき)』が今年3月に刊行されている。
題名は、安西氏の好きな音楽ジャンル「メタル」に「メタフィクション」をかけた意味あいだという。
まず中心になるのは、大ヒット作家ならではの無茶な生活が身体にたたって休業してから、この日記マンガを執筆するに至る前後の生活風景。
さらにそのなかで、「週刊少年サンデー」連載当時の裏話を自分のキャラクターたち相手に語りあう回想が挟まる。
さらにさらに、そのあい間を、安西氏の飼い猫「おもち」と「コタロー」の行動を擬人化して描くショートマンガ「おも×コタ」がつないで……と、二重三重の自己言及の構造をもった内容になっている。たしかにこれはメタ日記だ。
ただ、自己言及するということは同時に、安西氏につながるさまざまな人物、事物への言及があるということだ。
とくに安西氏の妻の描写がいい。毒舌ながらも親身で、生き生きとしてものすごーく魅力的な「いいキャラ」になっている。
本作の執筆をうながした知人編集者、サンデー連載時のファンレター、アシスタントとして安西氏が師事していた藤田和日郎氏、そしてなにより安西氏の創作したキャラクターたち。
マンガ執筆によって心身を崩しながらもやはりマンガが生んだ縁が安西氏により添って現在がある様子には、人の生き方の良し悪しをひとつの時点だけ切りとっては断じられない、しみじみした趣がある。
<文・宮本直毅>
ライター。アニメやマンガ、あと成人向けゲームについて寄稿する機会が多いです。著書にアダルトゲーム30年の歴史をまとめた『エロゲー文化研究概論』(総合科学出版)。プリキュアはSS、フレッシュ、ドキドキを愛好。
Twitter:@miyamo_7