『天下無双 江田島平八伝』第6巻
宮下あきら 集英社 \505+税
1951年4月19日、ダグラス・マッカーサーは退役を表明した。
これに先立つ4月11日、朝鮮戦争の方針をめぐって対立していたトルーマン大統領は、マッカーサーの更迭を発表。マシュー・リッジウェイ中将に任務をひき継いだマッカーサーは、本国に帰国したのち、ワシントンD.C.の上下院合同会議に出席し、退任演説を行った。
そこで「老兵は死なず、ただ消え去るのみ」の有名なフレーズが出たのである。
そのマッカーサーは父子二代にあたってフィリピンとの結びつきが強く、太平洋戦争では、フィリピン駐屯のアメリカ極東陸軍司令官として対日戦争を指揮した。
そしてフィリピン海域の秘密基地で新兵器開発をしているという設定でマッカーサーが登場するのが、宮下あきら『天下無双 江田島平八伝』である。
本作は、「わしが男塾塾長江田島平八である」のセリフで有名な江田島平八を主人公とする、『男塾』シリーズのスピンアウト作品。江田島平八の幼少時から、戦後に男塾を創設するまでを描く「塾長」一代記だ。
のちの威厳ある姿とは異なり、ヤング平八は『天より高く』の天(ソラ)のようなヤンチャ・キャラなのが新鮮に映るだろう。
『魁!! 男塾』主要メンバーの父祖が出てきたり、若かりし日の王大人(「死亡確認!」)との友情物語が描かれたりと、『男塾』ファンへのサービス精神に満ちており、またリヒャルト・ゾルゲや毛沢東、山本五十六といった歴史上の人物も登場し、江田島平八と敵対したり、友誼を交わす。
第6巻ではダグラス・マッカーサーが登場し、トレードマークのコーンパイプをくわえているのが特徴的だ。人類初の人工知能兵器で、江田島平八らに襲いかかってくる。
また、この6巻には、『激!!極虎一家』の枢斬暗屯子(すうざん あんとんこ)に匹敵する「女傑」が登場するので、こちらにも注目したい。
<文・加山竜司>
『このマンガがすごい!』本誌や当サイトでのマンガ家インタビュー(オトコ編)を担当しています。
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