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『わがままちえちゃん』 志村貴子 【日刊マンガガイド】

2015/04/23


WagamamaChiechan_s

『わがままちえちゃん』
志村貴子 KADOKAWA/エンターブレイン ¥680+税
(2015年3月25日発売)


中学校の入学式で「さほ」は「ちえ」という名の幽霊と出会う。ちえはさほの死んだ姉らしいのだけれど――。

ぐっとつかまれ、勢いで読んでいきたくなる始まりだが、しばらくすると「現実」だと思って読んでいた物語がひっくり返され、「あれ!?」と驚かされる展開に。
主人公の「ちえ」は、小説技法でいうところの「信頼できない語り手」だからだ。

ちえの夢や妄想と現実が交錯して描かれ、さらに実在する幽霊のさほも登場して、もうなにがなんだか!
説明は最小限のミニマムな物語なので、行間ならぬコマ間を想像しながら集中して読まないと、ついていけなくなってしまう。

妹への複雑な思いや、消えない罪の意識。家族への微妙な感情……。自分をもあざむいて、あれこれと形を変えて現れるちえのウソは、思春期のゆらぎや危なっかしさを、ひしひしと伝えてくる。
そして、わたしたちが信じている「現実」のあやふやさも。

ささっと読めてしまう漫画も多いなかで、さらりとしているのに濃密で、あとを引く一冊。「マンガ表現って幅広いな。マンガっておもしろいな」と、しみじみ思えること必至の作品であります。

あと、ちえが高校生になっておつきあいするやさしいまいちゃん、ちえと恋人同士だと思いこんでいた占い師の久保田さんら、ほかの登場人物もいい味出してる。



<文・かとうちあき>
人生をより低迷させる旅コミ誌『野宿野郎』の編集長(仮)。野宿が好きです。だらだらしながらマンガを読むのも好きです。

単行本情報

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