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5月17日は生命・きずなの日 『クリア・クオリア』を読もう! 【きょうのマンガ】

2015/05/17


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新装版『クリア・クオリア』第1巻
遠藤海成 KADOKAWA \524+税


5月17日は、生命・きずなの日。この記念日を制定したのは、臓器提供したドナーの家族で作る「日本ドナー家族クラブ」という機関だ。
今日はその記念日に寄せて、ドナーをテーマとした漫画を採り上げてみたい。

舞台となる島国では、長い間、とある奇病が蔓延し続けていた。
指先からじょじょに四肢が腐ってやがては死に至る「突発性末端壊疽症候群」。進行を防ぐには、義肢を使うか、もしくは抗体を持つ人間の手足と交換するしかない。
その抗体を持つ人間は1万人にひとり。彼らは「提供者(ドナー)」と呼ばれ、その肉体にはとんでもない高値が付けられる。

主人公は、そのドナーである少女・ドロシー。
彼女は自分の角膜を対価として、廃棄処分が決まっている人形「プラスティカ」を手に入れ、「ポンコツ」と名づける。 あまりにも割に合わない取引に、ポンコツ自身がぶつぶつドロシーに文句を言う始末だが、ドロシーは動じない。 自分はまがいものだからきれいじゃない、価値がないというポンコツに対して、ドロシーは平然と言う。
「紛い物はきれいじゃないの? わたしは造花もイミテーションの宝石も美しいと思うけど」
「だって望まれて生まれてきたんでしょ? 愛される価値の無い物をわざわざ手間ヒマかけて作らんと思う」
そんなドロシーに、ポンコツは忠誠を誓うようになる。

国家の宝であるドナーは、本来ドナーセンターで保護される存在だ。
だがドロシーは、世話係の青年ロッドに連れられ、訳あってそこを出てきている。
彼女の稀少価値は高く、よって様々な敵に狙われることになるのだが……。

殺し屋や仕事人が次々と登場する、陰謀渦巻くサスペンスストーリーなのは間違いない。
だが実際の漫画は、いわゆるハリウッド的な展開を見せないのだ。
ギャグコメディのコマの割合が高いせいで、緊迫した場面も感動的なシーンも、唖然とするほどさらりとかわされてしまう。

しかし不思議なことに、そんなでこぼこしたいびつな展開が妙にクセになる。
コミカルな場面の奥にある「真実」が、読んでいくうちにじわじわとこちらにしみてくると言えばいいだろうか?

登場するキャラには、ドロシーほかロッドバルト、オデット、ジャバウォッキー、チェネレントラ(シンデレラ)など、様々な童話の登場人物の名前がつけられている。
本当に奇妙な、だがその奇妙さゆえに大事にしたくなるおとぎ話という感がある。

タイトルの「クオリア」の意味は、本文中に明かされる。
脳科学の用語で、「言葉では説明できない感覚」「言葉の向こうにある得体の知れない感動」を意味するそうだ。
調べてみると、日本語訳では「感覚質」。簡単に言うと「感じ」。
そういう意味では、この作品は本当に「クオリア」だ。

読み終えた後の、言葉ではどうやってもあまったり足りなかったりする、この感じ。
それを提供できる、作者の個性に感服する。

冒頭にも記したが、今日は「生命・きずなの日」。
新緑の鮮やかな5月は、生命の萌え立つ季節。どんな命でも大切だと語るこのストーリーには、じつにふさわしい記念日だ。



<文・山王さくらこ>
ゲームシナリオなど女性向けのライティングやってます。思考回路は基本的に乙女系&スピ系。
相方と情報発信ブログ始めました。主にクラシックやバレエ担当。
ブログ「この青はきみの青」

単行本情報

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