『ハルロック』第4巻
西餅 講談社 \560+税
（2015年4月23日発売）

電子工作が大好き過ぎる女子大生が、まわりの人を巻きこんで珍発明をするというちょっと変わった作品……だったはずが、最終巻となる今回、突如として夢に満ちた青春起業物語になっている。
もちろん、ど素人も安心して読める程度に、専門的な表現が抑えられていて読みやすいのは、今までと変わらず。

前巻でも描かれていたように、大学生といっても単なるモラトリアムではなく、社会へ出ていくことへのプレッシャーが描かれている。
本作の主人公であるハルは天真爛漫なキャラクターが魅力なのだ。しかし、そのハルですら、未来に対して漠然とした不安を持っている。そのプレッシャーに加えて、ハルたちが作った「猫ツイッター」が一部の猫好きたちの支持を集めたため、ハルは起業しようと考える。そこにはもちろん不安もあった。

「ものづくりを仕事にしたい……だけど失敗は怖い……」
というハルに対して、彼女に強く起業を勧める今村さんはこう語る。
「失敗なんてめっちゃ貴重なリソースやん、リトライのためのデータがたくさん」

そして、ハルは起業する。
第一弾目の試作は案の定難航するが、苦しみながらもハルは楽しそう。まわりの人たちも少しずつ変わりながら、それぞれの未来へとつながっていく……。

……いやあ、まさかこんなにちゃんとした青春物語になるとは夢にも思わなかった。
爽やかな後味の良作！

＜文・永田希＞
書評家。サイト「Book News」運営。サイト「マンガHONZ」メンバー。書籍『はじめての人のためのバンド・デシネ徹底ガイド』『このマンガがすごい！2014』のアンケートにも回答しています。
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