HACHI-東京23宮- 3
西義之 集英社 ¥432
(2014年5月2日発売)
『ムヒョとロージーの魔法律相談事務所』で「週刊少年ジャンプ」読者から大きな支持を得た西義之が、久しぶりにジャンプ本誌に連載した本作。神の血を継ぐ「半神」によって支配された東京23区が「23宮」へと変貌していくダイナミックな序盤の展開は、約2年ほどの準備期間を要したと作者コメントにあったとおり、クラクラするほどの密度で読者を圧倒した。
どう見たって中野ブロードウェイがモデルのダンジョン的建築物「中野宮」を舞台にしたバトルなど、設定だけでもワクワクさせられる要素が多く見られただけに、23宮のうち新宿と中野しか解放されないまま、思わぬ短期終了となってしまったことが悔やまれる。
5月発売の最終3巻は、打ち切り感いっぱいで終わった最終第21話までに加え、描き下ろしのアフターストーリーと数々のアイディアスケッチ、さらに「赤マルジャンプ」に掲載された読切「秘蜜のヤミー」も収録。
描き下ろしストーリーでは、さすがに結末まで……というわけにはいかなかったが、最終話で次のターゲットとして登場した半神が、主人公たちに協力的になっていたりと、猛烈に「ちゃんと続きが読みたい!」展開が描かれている。
また、お堅い印象の眼鏡巨乳キャラ・エレナが、じつはサキュバス(淫魔)であったことが明らかになる終盤のくだりなどは、もとより西義之の女性キャラがフェティッシュな魅力にあふれているだけに、しかるべき展開であったならば、もっともっと盛り上がっただろう。
最終巻に描かれた「あとがきマンガ」の最後のコマを信じて、次の西義之作品に期待だ。
<文・大黒秀一>
主に『東映ヒーローMAX』などで特撮・エンタメ周辺記事を執筆中。過剰で過激
な作風を好み、「大人の鑑賞に耐えうる」という言葉と観点を何より も憎む。