『サンチャゴ』第2巻
円城寺真己 小学館 \552+税
(2015年5月12日発売)
『サンチャゴ』は、『プラスチック・サージェリー』で2012年に単行本デビューを果たした円城寺真己の最新作。
キリシタン農民3万人あまりが半年間幕府の軍勢に抵抗した江戸時代最大の反乱・島原の乱を、キリシタンの側から描いたシビアな歴史マンガだ。
物語の中心は、父も母も亡くし、孤独に暮らす隠れキリシタンの少女・サチ。ある時、彼女が住む貧村に、銃を持った謎のイスパニア人・ディエゴが流れつく。さらに、2人の前に、益田フランシスコ四郎と名乗る青年が現れる。
最新2巻では、代官の圧政に苦しむキリシタンの民たちが四郎に従い、決起。大切な人の命を奪われたサチも、復讐に燃えて反乱勢に加わるが……。
信仰は、苦しむ人々の心を救いもするが、ときとして命を懸けた戦いにも駆り立てる。
四郎とともに立ち上がった反徒たちは“神の民”のはずが、その表情にはひとつの安らぎも見いだせない。歴史の凄惨さを感じる。
薄幸なサチとひねくれ者のディエゴの間に、徐々に生まれ始める絆。それは、救いの光となるのか。
<文・卯月鮎>
書評家・ゲームコラムニスト。週刊誌や専門誌で書評、ゲーム紹介記事を手掛ける。現在は「S-Fマガジン」(早川書房)でファンタジー評を連載中。
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