『Dr.モードリッド』
外薗昌也 幻冬舎 \700+税
1877(明治10)年6月18日、欧米の先進技術や学問、制度を導入して国力を高める「殖産興業」のために雇用された「お雇い外国人」のひとり・動物学者エドワード・S・モースが来日した。
2日後の6月20日、汽車で横浜から新橋へ向かう途中、大森駅をすぎてすぐの崖に貝殻が堆積しているのを発見したモースは発掘調査を行い、「大森貝塚」を発見。これが日本初の科学的な発掘調査となり、日本の考古学の出発点となった。
考古学者が主人公の創作は、映画『インディ・ジョーンズ』シリーズはいうまでもなく、マンガにおいても『MASTERキートン』や『妖怪ハンター』、『宗像教授伝奇考』と枚挙にいとまがないが、ここではSF、ホラーからラブコメまで幅広い作品を生み出しているベテラン作家・外薗昌也がモースらと同時代のアメリカ西部を舞台とした異色の伝奇アクションマンガ『Dr.モードリッド』を紹介したい。
19世紀末のアメリカ。西部開拓時代の裏で相次ぎ起こる怪事件を解決するのは、国内最高峰の知識を持ちながら“異端”として学会を追われた考古学者モルダート・モードリッド。
Dr.モードリッドは、頭脳と様々な武器が仕込まれた機械製の義手を駆使して怪事件に挑む。
人間が純金に変わる、ゴールドラッシュをモチーフとしたエピソード「ゴールド」や地底に封じた吸血美女との対決を描く「リリス」を含む、6つのエピソード全8話が収録されている。
最終エピソード「見えない」では、ゴーストタウンと化した町での怪物との攻防戦が描かれ、モードリッドの奇策が思わぬ解決を導く。
最終的に考古学そのものとは若干離れた感じはするが、基本フィールドワークでアクティブな印象がある考古学者は、ほかの学者より「フィジカル面でスゴそう」というイメージはそのまま踏襲されている。
モードリッドの活劇に胸躍らせよう。
<文・富士見大>
編集プロダクション・Studio E★O(スタジオ・イオ)代表。『THE NEXT GENERATION パトレイバー』劇場用パンフレット、『月刊ヒーローズ』(ヒーローズ)ほかに参加する。